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サリーのrinのレビュー・感想・評価

サリー(2023年製作の映画)
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(別媒体から感想を転記)

2024/03/09
台湾映画と香港映画を求めて大阪アジアン映画祭に来てみました。この『サリー』は「田舎娘、結婚詐欺に引っかかりパリに行く」といったプロットで、台仏合作。昨年シネマートで観た『僕と幽霊が家族になった件』の林柏宏(リン・ボーホン)が人間として完璧な弟を演じている。

だいたいこういうお話は「田舎は窮屈で都会は自由」「家族は古い価値観は押し付けてくるけど私は自分の道を進む」という二元論になりがちだけど、この『サリー』はそれを一側面くらいにしつつ田舎と家族の美点も見せるし、詐欺の道具となるマッチングアプリも存在を糾弾しないし、非常にバランス良し。

上映後は練建宏(リエン・ジエンホン)監督とのトークセッション。作中に登場するヒヨコと犬のかわいいTシャツ姿でご登壇。まず何よりも先に長編デビュー作と聞いてびっくり。このテーマで陳腐に感じさせず、説教くさくもなく、会場にあったかい笑いも巻き起こしていて、熟練の手腕なのかと思ってた。

本作は2018年から準備を始め、当初は女性がロマンス詐欺に遭うお話をひとりで練り始めたが、男性の目線だけでこの物語を完成させるのは難しいと感じ、共同脚本にクレジットされている劉梓潔(エッセイ・リウ)さんに声をかけ、彼女の視点も取り入れながら、実際に田舎に滞在したりして固めたとのこと。

この製作過程を聴くと、デビュー作でこれだけバランスが良いのも頷ける。観客からの質問で劉梓潔(エッセイ・リウ)さんが『父の初七日』という映画の監督だとわかったので、とりあえずAmazonでポチっておいた。東京帰ったら観てみよう。
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