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成功したオタクのbhのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
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兎にも角にも言葉にするのが面倒なくらい自分の中に色々な感情が湧き出てしまい、今ここで文章にしなければこの映画を観た意味がなくなってしまうと思った。

私はアイドルが好きだけど一定の距離を保ちたくて、それは自分なりのリスクヘッジだと思っている。"好き"って自分勝手で暴力的な感情だから自分が望む相手の姿じゃなくなったら簡単に手放せる。けれど、好きになりすぎたら出会う前の感情には戻れない。だから好きになりすぎないよう心の棲み分けを行うようにしている。だってその対象が自分の全てではないのだから。
それに、好きなアーティストの作品と好きなアーティストの思想は切り離して捉えるべき。例えばThe1975のマティが人種差別的な発言をしたことを私は絶対に許せないけれど、それでもマティの作った音楽に救われた過去を忘れたくない。作中にもあったように誰しも人生の背景には音楽があって、音楽が記憶のトリガーとなることは多い。だからこそ好きだった何かを否定することで自分の過去を否定したくない。

疑問として、好きな人の好きなものまで好きになるってすなわち"好きな人そのものになりたい"という意味な気がしていて、その場合の自他の境界線ってどこにあるんだろう。敬愛のようなものを抱いているからこそ好きな対象に似ていきたいという感情が芽生えるのだと思うけれど、その時自我はどこにあるんだろうね。

アーティストとファンの相互的な関係性を考えるきっかけがあったり、間違いに対してきちんと怒りを示し抗う強さのようなものを見せつけていたのが非常に女性のエンパワで良かった。

p.s.アーティストの作品と思想は切り離すべきとは言ったけれど私は好きなアーティストが性犯罪を起こしたらその人の作品には一切触れないし思い出すこともない。そこにあるのは怒りだけ。
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