故ラチェットスタンク

恐怖の報酬の故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

恐怖の報酬(2024年製作の映画)
2.0
 唯一、100分に収めてる点だけは褒められるけれど、画面の練度、サスペンスとその積み重ねがあまりにも貧弱すぎる。クルーゾー版もフリードキン版も筋は違えど「ミッションの過酷さ」の一点は共通していた。ミッション遂行において、「それどころじゃねえ」という全てに先行するサスペンスが、圧倒的な可鑑賞性を提供していた。冷や汗が流れ、動悸が止まらず眩暈がする。

 それに対してこの、ルクレルク版は--便宜上こう呼ぶが--どちらかというとカーチェイスやら銃撃戦のアクションにフォーカスを絞ったようだ。ニトロを運んでいる恐ろしさはあれ、そこをあまり気にしていない手つきだ。銃撃の最中で、危険な地形の移動の最中で、言い訳のように雑に積荷のカットが挟まるのが良い証拠だ。キャラクターも道中でさしてやつれたり汚れたりしない。生ヌルい。爆発だけ3割マシで増えているが、馬鹿の一つ覚えのような似たり寄ったりの画面しか撮れていない。グラフィックは綺麗だが、それ以上の感想も浮かばない極めて無計画/無思考/薄弱なスペクタクル。

 序盤で人が取っ組み合いしている場面の芝居付けのしょっぱさからして既に結構なもたつき具合だったけれど、アクション場面での編集も全体的に酷い。漠然とした繋げ方の連続で何撮ってんねんと言う感じだった。つまらない登場人物のつまらない掛け合いも見ていられない。兄弟が全く兄弟らしく見えないのも、ちょっとマズイ。

 パイプから漏れ出た黒い液体の池を渡るくだりと障害物を爆破するくだりをクロスカットで繋げたのもいただけない。しかも池を渡るくだりをその後繰り返すし。地雷原のくだりもダラダラと続けるし…全体的にもうちょっと取捨選択しようよと言う感じ。

 別にミッション自体をスパッと終わらせるのも--一瞬で爆破するニトロを運ぶという面白さしかないコンセプトをスパッと処理するのは如何なものかということはさて置いて--悪い事ではないが、その代わりにお出しされるのが薄味の手垢のつきまくった英雄譚&メロドラマなのは流石に良くないのではないか。いや、そのミッションの処理の仕方すらノロノロと手際が悪いわけだけれど!