故ラチェットスタンクさんの映画レビュー・感想・評価

故ラチェットスタンク

故ラチェットスタンク

エマニュエル(2024年製作の映画)

3.6

なるほどって感じだ。三者関係、あるいは見つめられる事による自己の回復。批評家として他者にしか意識を向けられないでいた主人公が、ホテルでの交友を通して再生していく。被写界深度の弄り方など、平板だがここぞ>>続きを読む

ビーキーパー(2024年製作の映画)

3.5

だから、恐らくステイサムが敵を追い込み殺戮する場面の多くにおいて、彼の移動経路や動線が全くと言っていいほど確認されず、されたとしても申し訳程度のショットの繋ぎで流されていくというのは、彼が虚構的存在者>>続きを読む

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録(1999年製作の映画)

4.1

上下が極端に広がり、紅白黒の幾何学的で鮮烈な色合いで彩られた学園を筆頭にして、宙を舞う薔薇の花弁や庭を満たしていく水、腰まで届くロングヘアなど、凡ゆる記号表現が、よりマッシブかつカリカチュアされた形で>>続きを読む

恋するプリテンダー(2023年製作の映画)

3.4

コアラのくだりとか、ちょっとやりすぎなんじゃないと思いますが。

セキュリティ・チェック(2024年製作の映画)

4.2

『Carry On』

 すごい。カメラをジワジワと寄せ、パチンと引き、豪快にぶん回す。間髪入れない畳み掛け。狭いカウンター、トイレ、検査室から開けた管理室、バックルーム、倉庫と、目眩(めくるめ)く移
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アイズ・オン・ユー(2023年製作の映画)

3.4

『時の女性』

 各シーケンスが視点的、時間的、空間的、何かしらの形で分断されており、そこまではまだ分かるとしてもカットバックで継ぎ接ぎにされてしまうと流石に散漫な印象を感じてしまう。『デート ゲーム
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HOW TO HAVE SEX(2023年製作の映画)

3.4

ラストのチョけた感じがいけ好かなかったですが。

Apple Original Films『ウルフズ』(2024年製作の映画)

3.4

『Just Two of Us』

 ポスターやコンセプトから凸凹のバディコメディを想像したが、近かれど遠からずな性格の一匹狼たちの話なので寧ろ相手との行動・習性のダブりを描くコメディになっている。凸
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シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)

3.4

『私の病気』

「いま、ここ」から浮遊してしまう主人公に合わせて、常に時系列が混濁したような映像表現。また、その図太さの傍らで極めて神経質な主人公の性格故に妄想シーンも多く、正に自分が現実にいる実感を
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悶絶!!どんでん返し(1977年製作の映画)

3.6

まあまあ勝手にやっててくださいや!って感じの映画だった。絵で魅了される瞬間は多かったから退屈はしなかったけど、話に感心したかというとそんなに。

ザ・バイクライダーズ(2023年製作の映画)

3.9

他のジェフ・ニコルズ作品と良い所が特に変わらないので言うことがあまりないのですが、題材が好きなので監督作の中ではかなり上の方です。終盤にかけて、何でもないはずのショット、リバースショットによる視線の交>>続きを読む

ラビング 愛という名前のふたり(2016年製作の映画)

3.6

ジェフ・ニコルズの中だとそんなになんだけど、やっぱりキッチリとしたショットと描写の積み重ねがある。超オーソドックスなモンタージュとデクパージュだけれど、それ故に隙がない。着実な積み重ねが実在感を生んで>>続きを読む

ミッドナイト・スペシャル(2016年製作の映画)

3.8

凄えハードでストイックな映画だ。話の途中に観客を放り込む導入部分に始まって、全体図も会話の中で示唆される程度。ひたひたとしたサスペンスが続く重厚なロードムービーとして構成しつつ、核に据えられているのは>>続きを読む

MUD -マッド-(2012年製作の映画)

4.2

何度か入る視線のクロスがアツすぎる。骨太なジュブナイルモノだ。ジョン・ワッツとか『フリクリ』とかが好きな、心にマセガキを飼ってる人には絶対観てほしい。半ば自立していてもどこか常に鎖のようなものに繋がれ>>続きを読む

テイク・シェルター(2011年製作の映画)

3.6

やっぱりジェフ・ニコルズ映画撮るの上手いね。毎度地味だけど。

絞殺魔(1968年製作の映画)

4.3

適当に観ちゃったけど凄く面白かった。女性や同性愛者、ディスアドバンテージを抱えた人を筆頭にマイノリティが一個テーマになってるんだなーと見ながら何となく思っていたら、最終的にマジョリティの中に居る定義付>>続きを読む

クリスマスはすぐそこに(2024年製作の映画)

3.4

歌の視聴を通過点にしてコミュニケーションが可能になる。マジックで出来てる。フィクションじみた飛躍と共にあらゆるご都合が起こり、因果律も意味合いも吹き飛ばして話が終わる。クリスマスってそういうもんなので>>続きを読む

グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(2024年製作の映画)

3.4

『グラ二エーター』

話のフォーカスがどこに当たってるのかよく分からず、フレーミングの平板さに割と退屈させられるのに、プロット自体は変に前に進んでいてアクションも入るので、目だけは退屈しない時間が続く
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スパイの妻(2020年製作の映画)

4.1

千鳥足のようなフラフラとしたおぼつかない足取りで映写を終えたスクリーンという、その機能を停止しただ虚に構えられたフレームの前へと進み出る蒼井優の、圧倒的な浮遊感。奇術にかけられた観客のように完全に翻弄>>続きを読む

クレイヴン・ザ・ハンター(2024年製作の映画)

3.7

『Happy Birthday』

 「面白い!と素直に言わせてくれ…」とここまで思った映画は久々だった。「これがもしもSSU一作目だったらどんなに良かったか…」と夢想すると同時に「まあ言うても相変わ
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トラップ(2024年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

『It’s A Trap!』

 近作のシャマラン映画の中では一番良かったかもしれない。不細工な部分もあるが、手数が多くて満足。

 相変わらずモブキャラの挙動がおかしくて、バレる/バレないみたいなサ
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悪魔と夜ふかし(2023年製作の映画)

3.6

『悪魔のいけにえ』

まあ、面白かったんだけど、冒頭でモキュメンタリー的な立て付けをしていた分、割とオーソドックスな映画っぽい画面や音響が少々ノイズに。番組映像自体はギリギリ許容できるとして、モノクロ
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ドリーム・シナリオ(2023年製作の映画)

3.4

クリストファー・ボルグリ&アリ・アスター&ニコラス・ケイジの座組みであらすじを聞いて想像する内容割とそのまんま、といった感じで、小品だなーと思うなど。SNSのバズ文化&中年の危機のテーマで起きそうな事>>続きを読む

予兆 散歩する侵略者 劇場版(2017年製作の映画)

4.2

とにかくシャープでソリッドな表現の畳み掛け。道路に落ちた烏の死体など、黒沢清の映画ではおよそ馴染みのないモチーフが連続し、光のゆらぎ/点滅や画面の隅に佇む人影などのお馴染みの演出も、超純粋な恐怖描写に>>続きを読む

散歩する侵略者(2017年製作の映画)

3.9

『リアル』『トウキョウソナタ』『散歩する侵略者』と、田中幸子と組んでいる時の黒沢清は真っ直ぐだ。宇宙人たちが概念を奪っていくことで、人々は強く引かれた自他境界から解放されていく。冒頭からして一見ホラー>>続きを読む

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)

4.5

リーマンショック直後の、異化され虚構化した東京を確実に切り取っていつつ、そこに黒沢清印はこれでもかと確実に押されていて、しかし、その殆どが純化されている。これほど素直に「綺麗だ」と言える黒沢清映画は他>>続きを読む

岸辺の旅(2015年製作の映画)

3.4

慰霊映画。好きだけど、ちょっと長いかな。宇宙が無で満ちているという説明はつまり霊もまた生きている、ということ。そして終わりもまた、新しい何かの始まりなんだ、私たちはそれに立ち会っているんだ、と「無」に>>続きを読む

旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)

3.3

右も左も分からない異国での撮影。刺々しく居た堪れない空気の中に、いくつかの仄かに生暖かい交感があって、伽藍と浮ついた風景の中で少しだけ自分の居場所が分かる。そういうほんのりと前向きなドラマで嫌いじゃな>>続きを読む

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

3.9

『Comes Great Responsibility』
 
 『贖罪』を筆頭にして、2010年代の黒沢清は予算のかかった映画を撮るほど情景描写が行き過ぎてギャグみたいになって物によっては爆笑してしま
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リアル 完全なる首長竜の日(2013年製作の映画)

3.4

首長竜よりも明らかにフィロソフィカルゾンビの方に興味が寄っていて、もっと言えば夢想空間において具現化された数多の死体の方に興味が寄っていて「面目躍如ktkr!!!」的な手つきを微笑ましく思いつつ、やは>>続きを読む

ロボット・ドリームズ(2023年製作の映画)

4.1

『Do You Remember?』

 何よりもラスト、全く交わることの出来なくなってしまった、てんでばらばらになった2つの人生が、編集によって束の間奇跡的に交錯した(錯覚を起こす)瞬間の、この上な
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ヒューマン・ポジション(2022年製作の映画)

3.1

スタティックなショット、スローな編集の連続。上半身にウェイトの寄った寄りの画or極端な俯瞰の画のフィックスが78分延々続く。しんどい。繰り返し登場する椅子や間取り、主人公の仕事(新聞記者)も、「ポジシ>>続きを読む

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)

3.4

『THE FLASH』

 予告から受けた激しいコメディの印象はなく、ほのぼのとした緩やかな笑いに包まれている映画だった。ジェネレーションギャップコメディなので、頑固で直情的な過去の人を笑い物にするよ
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