『私刑』の話なのでフリッツ・ラング、だから最後には地獄に突入して終わる。スクリーンプロセスで異世界性を出し、「地獄かあ」と台詞にまで出してくれる親切設計。因みに冒頭5ショット目の、菅田将暉が乗った車を背後から捉えた少し風変わりな画面がラストを予告している。
佐野くんはかつての哀川翔を投影してるので助ける理由は「アシスタントだから」で十分、対する菅田将暉は香川照之だと考えると物語構造も納得がいく。となると高橋洋が脚本に関わっていないので、コメットさんになる筈の古川琴音をだいぶ持て余してるのだな。ラング的なファムファタールにもできてないのが痛い。
一発一発の発砲音が重い銃撃戦は久々に映画館の音響の必要性を感じたが、手前と奥に敵味方を配置した良いショットがあるわりに、1階と2階の高低差を収めた三次元性の広がりを感じさせるショットが見られないのも不満。フライシャーの「マジェスティック」では、屋根と下の階其々の敵味方を1画面に収めて位置関係をはっきりさせる良いショットが有ったと記憶している。
銃撃戦の途中でいきなり雪を降らせているのは東映プログラムピクチャー魂を発露させており、グッときた(唐突に止んでいるのも◎)。
とはいえ、銃撃戦のお膳立てにここまで時間を割くのは現代邦画では致し方ないのかなあと。昔なら100分未満で撮ってたよねえと。