黒沢清監督にしては分かり易いバイオレンスアクション。
もっと登場人物各々の恩讐めいた悪意が描かれるかと思ったが、主人公吉井本人にしてもただ他者に関心が無いというだけでそこまでの人否人という訳でもなく(転売屋は世の害悪というのは前提で)、彼をターゲットにする敵陣営の襲撃理由も表層的かつ自己中心的。ともすれば同じ側にいてもおかしくない人間同士が不条理にお互いを追い詰める様子は、顔の見えないネット社会を通して誰にでも起こりうる現代の不合理な暴力/攻撃を表している様に感じる。佐野くんが何者なのか？というのはとりあえず置いといて、強力な反撃を受けると被害者面して尻込みする様も安易にSNSで誹謗中傷を繰り広げ炎上騒ぎや法的措置に恐れをなして投稿やアカ削除して逃亡する連中に通じるものがあり、ある意味胸スカ。
吉井自身人を殺すのに無感情になっていくし相当大きな事件を経験した訳だが、人間そうそう変われる訳では無いし日常は無情にやってくる。紙一重で命を拾った主人公に昨日と同じ今日はやってくるのか？それでもJK刃の梱包発送作業が待っていると思うと笑けるものがある。
人生は滑稽にして地獄なのだなと。
追記
トレーラーで流れる
「馬鹿にしやがって。お前殺ぉす。」
って台詞なぜか柄本明だと思い込んでた。何でだろ？別の役者二人のふたつの台詞を繋げてたってのもビックリ。
