甲子園の魔王

ルックバックの甲子園の魔王のネタバレレビュー・内容・結末

ルックバック(2024年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

チケットを予約購入していたのに人身事故による電車の遅延で間に合わなくなり、緊急で代わりの劇場を探すも、上映館もそこまで多くない上に公開初日なこともあって都心部は席も埋まっていて、結局大雨のなか舞浜まで行かなければならなくなって鑑賞前はかなり萎えていたのだが、そんな曇天のような気分を晴らしてくれる良作だった。

俺も小学生から中学くらいまで漫画を描いていて、幼馴染の平田君と見せ合いっこをしていた。詳細はもうあんまり思い出せないけどシュール系のギャグ漫画ばかり描いていて、読んで笑わせたら勝ちというにらめっこルールで競っていたのを覚えている。比喩じゃなく血を吐くまで笑ったのはこの時くらいだと思うし、読んでくれる人を意識しながら描くのは楽しかった。この映画のラストの京本の笑顔に俺は平田君の笑顔を重ねて見てしまった(残念ながら平田君は京本とは似ても似つかない、シュタインズゲートのダルそっくりの容姿だが)。
結局俺は本気になれなくていつの間にか描くのを辞めてしまったけど、今でも子供相手に絵を描いたりするとやっぱり絵を描くの好きなんだなと感じる。この前衝動的にデッサンの本買っちゃったし、寝る前に頭に浮かんだ面白そうな話をiPhoneのメモに残したりするし、もうしばらくは「漫画描きたいな〜」とうっすら思いながら生きていくと思う。たぶんそういう創作やモノづくりに対する思いを捨てきれない人は俺以外にもいっぱいいて、だから『ルックバック』は多くの人に刺さって自分の物語のように感じられるんだろうね。

隣に座った女性が遅れて入ってきたんだけど目の前を横切った事を上映終了後にめちゃくちゃ申し訳なさそうに謝ってきて、俺は俺で「ア、イヤソンナ、ゼンゼンゼンゼン…」とゼンゼンゼミになってしまって、居た堪れなくなったのでばたばたと劇場を後にしたが、じんわりと余韻が残る映画だった。
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