えるどら

ルックバックのえるどらのレビュー・感想・評価

ルックバック(2024年製作の映画)
4.8
藤本タツキ漫画の映像化としてここまで完成度の高いとは…!!!

アニメーションの粋が詰まった最高傑作。
動き、表情、演技、劇伴、効果音、背景美術に至るまでその一切に無駄が無い超クオリティのアニメ映画。

開幕5分で涙が流れていた。
きっと漫画の線をそのままアニメーションにしたような表現に、原作漫画を読んだ時のあの感覚がそのままスクリーンに映っているような描写に、感動していたからだろう。
漫画を描くことがテーマのこの作品において、漫画らしいアニメであることは大きな意味を持つ。

それからは圧倒されっぱなしだった。
人物の表情はまさに藤本タツキ漫画そのものだったし、動きは漫画らしくかつアニメらしい誇張もあってすごく満足感が高かった。
僕は人間の動きにフォーカスして動きを感情で誇張した表現がすきなので。
実写では不可能なアニメらしい動きだった。
そのキャラクターに付けられる声はどれも馴染んでいて良かった。
どこでも名前を聞くような売れっ子声優ではなく、若くて実力がある俳優さんを起用していたらしい。
声優らしいアニメ声では無かった気がするが、かといってジブリほど違和感も無かった。
キャスティングも良かった。
耳に心地よかったのは演技だけでなく劇伴と効果音もだ。
落ち着いて映像を邪魔しないどころか、シーンの雰囲気を引き立てるBGMに映像のリアリティを高める効果音。
効果音がリアルで背景の描き方がリアルだと、アニメーションなのに”実写感”が高まるんだと驚いた。
効果音と相互にリアリティを高めていたのは背景美術だ。
京本というキャラがいるんだからここにこだわるのは当然か。
個人的に登下校のあぜ道と大学前の雪が降った道路がお気に入りで、実家の景色を思い出した。

総じてどこをとっても素晴らしく、原作の出来が良いだけに上がりきっていたハードルを上手く飛び越えてくれた。
漫画をアニメにすることで、本来あった含みや意義は少し損なわれるかもしれないが、そこは媒体が変わる以上仕方が無いだろう。
間違いなくアニメーションとして最高傑作のひとつだ。
えるどら

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