ぜにげば

エイリアン:ロムルスのぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

 IMAXで鑑賞!めちゃくちゃ面白かった。『エイリアン』シリーズの良いとこ取りな上で、ジャンルがちゃんと「ホラー」だったのが素晴らしかった。ただスコアをどうするかが本当に難しい。今までの『エイリアン』シリーズの中で間違いなく一番楽しめたが、「凄い作品を見た」という感覚は初代の方が感じれた。うーむ。
 冒頭の演出から最高だった。リドリースコット印?のオシャレな棒のタイトル演出、暗闇からヌッと現れる船体、エイリアンの化石化というちょっと癖を刺激してくる生態など掴みは上々。ただ設定に関してはかなり分かりにくいというか、今でも正直ちゃんとは分かっていない。リプリーが船外に吹き飛ばしたあの個体が脱出元の母船と同じ位置に漂っていて、そこで化石を回収。ある程度実験を進めるも惨事に…ということなんだろうか。既に繁殖していたエイリアン達はどうやって増えたのだろう。クイーンが船のどこかにいたのだろうか。見てる最中は「まあいっか」で済ませて気にならなかったし、まあいっか笑
 キャラクターについて。アンディが堪らなく良い。最初から優しさに溢れる表情が魅力的で、白い血が流れてアンドロイドとすぐ分かることも含めて、彼のことを愛おしいと思うのに時間はかからなかった。ただ誰がアンドロイドなのか分からないミステリー的な楽しみ方が早々にできなくなったことは一つデメリットかなとは思う。こればっかりはトレードオフだ。社の利益重視モードに切り替わってからの頼もしさも好きだし、最終的に戻ってくれるのも嬉しい。ただ、結局彼の優しさも「作られたもの」なんだなという感情は最後まで払拭できなかったから、そこは少しモヤモヤしてしまう。「人間だって大差ないもんな」と自分の中で折り合いをつけるじゃないけど、納得させた部分がある。作中でその辺に言及があれば個人的には嬉しかった。アンディのことだけでなく彼以外についても少し書くと、何よりレインが可愛い。ケイリー・スピーニーが可愛い。ひたすらに。そして正直この2人以外は言ってしまえば死ぬために生み出されたキャラクターだから、あまり生存中にキャラが立っている印象はなかった。ただ死に様はそれぞれちゃんと味があった。アンディにビヨンに関しては正直見ていてストレスを感じていたが、退場までの展開が早かったのが素晴らしかった。
 映像に関しては、IMAXで見たおかげか鮮明でありながら暗く、視界のほとんどを占める感じに没入感を高められた気がする。ただ自分の癖に刺さる「特撮感」のようなものはあまり感じなかった。実物で撮ることに凄まじい拘りを見せていることを見終わったあとに調べて知ったが、序盤のフェイスハガーの歩き方がぎこちなくて可愛いくらいで、良い意味でも悪い意味でもCGとの違いは分からなかった。もしかしたら僕は当時の画質も含めての特撮感が好きなのかもしれない。オフスプリングもCGを使っていないらしいが、演じられたバスケ選手をYouTubeで見たことがあり、特徴的なシルエットをしているからか見ながら気付いてしまった。「人型を出したい/人と境界が曖昧な存在を出したい」という意思がリドリーにはずっとあるのだろうか。個人的にはあまりにも人間に寄りすぎてる印象を抱いてしまい、素直に気持ち悪いと思えなかった。成り立ちにエンジニアや黒い液体などが絡むのは構わないが、好きなのはゼノモーフという生物だし、半人間みたいなものはもうやめて欲しいかなぁ…。キモさとかっこよさが欲しいのに、中途半端なキモさで残念。股間に謎のバツ印があったからそこから何か生やすなり射出するなりするのかと期待して特に何も無かったのも残念だった。もっとキモくして欲しいし、しないならもう初めからポムポムプリンにして欲しかった。
 「アクションシーン」といえるシーンはジャンル的に多くは無いが量より質で、無重力シーンに関しては最高だった。船に入った時点でのの「定期的に重力が発生する」っていう設定が神懸り的に面白いし、丁度忘れた頃に「無重力に切り替える/戻す」という発想。素晴らしすぎる。たった一つの設定で二度美味しい、これこそがアイデアだと感じた。アンディが支えるかっこよさ、銃のオートエイムも気持ちいい。その後の反作用で酸を逃れるちょっとした工夫も含めて、ただじゃ終わらない最高のシークエンスだった。その後無重力に切り替えたせいで重力が定期的に発生する状態になってしまい、自分たちが落ちそうになってピンチに陥る展開も含めると三度美味しいアイデアだ。ただここについては不満もあるので後ほど書く。
 フェミニズム要素について。性的なメタファーは沢山あった気がするが、フェミニズム的な風刺のシーンの割合はあまりなかったように感じる。というか正直ピンと来なかった。一番分かりやすかったのは、ビヨンが棒状のスタンガンをエイリアンの蛹?にグリグリ差し込むシーン。どこからどう見てもそれとそれのメタファーだった。直前に液が滴るシーンも挟まれていたし何より形がそのまま。ただ、そうだとして何を意味するのかは自信を持っては言えない。無理やり挿し込んだ男性が酷い目に合うわけだから、そういう意味の風刺だったのだろうか。その瞬間の絵面はそうだが、状況は怯えながらみんなの命を守るために攻撃しただけだったし、見ていてしっくりは来なかった。オフスプリングとケイに関してはまだ個人的に納得のいく解釈ができている。恐らく、「妊娠期間中に摂取してはいけないものは守りましょう」みたいな話なのかなと思う。打つ経緯が、「ありついた先で見つけた注射器を生きるために仕方なく打った」などではなく、「渡された注射器を指示を無視して打った」だったので、これは作中の状況と喩えに乖離はないように感じる。常識的な母親の責任として、胎児に悪影響を及ぼすことは絶対にしてはならない。もししてしまったら胎児の発育に影響(オフスプリング化)があるかもしれない。オフスプリングが彼女を殺したのは、いわゆる「呪い」的な意味があるんじゃないかなと思う。「明確に母親のせいで健康に生まれれなかった子供が死んだ後に母親を呪い殺す」みたいな妖怪的な何か、世界のどこかに伝承としてありそうだけどなあ。自分の知識が乏しいから例は出せないが。序盤で主人公に「父親は誰?」と聞かれて「その辺の男」と答えるシーンがあったし、責任に関しての認識が甘いキャラ造形って解釈は間違っていなさそう。それなりにスラム的な暮らしではあっただろうけど、その言葉を受けての主人公のリアクションが若干戸惑っていた気がするし、あの世界観でも「その辺の男」はやばい返しなのだろう。男性の気持ち悪さはこれまで沢山描かれていたし、気を引き締めるという意味も含めてそういうシーンを求めている自分がいるが、対象が女性なのは(僕が気づけた限りだと)初めてなので、その点に関して素晴らしいなと素直に思う。見当違いな気がしないでもないが、少なくとも好きな解釈ではある。他にも腹を突き破る幼体の膜の剥け方や、ハガーを引き剥がす時のニュルニュルが口から出ていくところを横から写したシーンは性を仄めかしてるようなシーンだったけど、何の風刺かは分からなかった。そもそものモチーフがそういうものだから、全部のシーンをそれっぽく写すのは不思議じゃないし、意味が込められてなかったとして減点対象にはなり得ない。というか自分が気づけていないだけかもしれないのに減点などできない。全部クソ真面目に風刺してるとも限らないし。
 不満点がなかったわけじゃないので4つほど書いておく。まず1つ目、落下して主人公をエイリアンがキャッチするシーンは本当に意味がわからなかった。『エイリアン3』でリプリーが何故か殺されなかったシーンも舐めプに感じて個人的に好きではなかったが、後に「胎内にクイーンを宿しているから」と判明するから「判明するまでモヤモヤする」点を除いては問題のないシーンだった。ただ今回のセルフオマージュとも取れる睨むだけのシーンは、まあまあな尺を置いてから「フェイスハガーが現れる」だけ。寄生させるために殺さなかったというのは分かったが、流石に生ぬるすぎると感じた。落下してしまった時点で「え、どうすんの?」という感じだった。裏をかこうとしたのか分からないが、普通にアンディが腕を掴んで落下しないって展開で十分だったように思う。その後の落ちながらエイリアンを撃って助ける展開も、アンドロイドとはいえ落下の衝撃に耐えられるなんて知らなかったし、酸の返り血を浴びることもなく、床も煙が出るだけで全く貫通したりしない溶け方なのが納得いかなかった。扉の向こうのケイを見捨てたアンディに怒るシーンが2つ目。「人間は感情的になりすぎる」ということを印象付けた過ぎてると感じたし、なんなら笑ってしまった。「トロッコ問題(一択)」じゃん。3つ目は、ビヨンがスタンガンを突っ込むシーンの前に、長めの通路を音もなく忍び寄って来てたこと。アニメじゃないんだから演出で誤魔化すのは無理がある。4つ目はもはや不満でもなんでもないが、レインが航海日誌的なものをリプリーみたいに読み上げて(実際に読み上げてるわけじゃないのはわかってます)映画が終わるが、ちょっと違和感があった。会社に言われて行ったわけでもないのに、急に柄でもなく第三者に向けて記すかな?まあ記したのが時系列的にいつかは分からないけど、エモく映画の幕を引くために「させられてる感」を抱いた。自由を求めて外に出て自分以外が全滅した時、アルミンなら記すけど、エレンなら多分記さない。レインも多分記さない寄りな気がする。少なくとも、記すようになるまでの心情が描かれないと違和感のあるキャラ造形だと思う。僕にとってはそう感じた。この後2人がどこに行くのかもよく分からないし。
 すごく細かい疑問点なんだが、最後小惑星帯に突っ込みそうになった時に、ギリギリで自動操縦に勝手に切り替わった気がした。あれはなんだったんだ?アンディが変えた?記憶が曖昧だからちゃんとは覚えてないけど、2回目見た時になにか発見があるかもなぁ。
 総評。自分が書いた文章なので、自分で要約するなんて御茶の子さいさいです。「ケイリースピーニーが可愛かった」です。スコアは、「映画館で見た」バフで、初代を0.1上回る4.4にしておきます。
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