このレビューはネタバレを含みます
『エイリアン』シリーズの最新作で、監督はフェデ・アルバレスが務める。吹き替え版で見た。
産みの親であるリドリー・スコットが太鼓判を押しているだけあって、過去作のオマージュが散りばめられており、ファンならニヤっとしてしまうところがけっこうある。臆面もなくやっていてすごいと思ったのだが、こういう古参ファンへの目配せみたいなことはそれこそ『スター・ウォーズ』とかでやってしまうとよく批判されるところをまだこのシリーズはそれを楽しめる土壌があるんだなと思った(ただ、リドスコ接待すぎないかな……とも思う)。シリーズを見てなくても楽しめるような内容で、そのへんについても作り手はとても気にしているようだし、好感が持てる作品である。
本作はシリーズの重要なモチーフであるアンドロイドがかなりうまく使われており、アンディ(デヴィッド・ジョンソン)が人的災害かつヒロイン的役割を果たしているのがポイントだと思う。主人公の女性に救い出される男性という現代的なアップデートはまあ適切と言えるし良いのだが、ここにチップの組み込みという仕掛けを使うことによってアンディが会社の命令に忠実なアンドロイドに変貌するところが面白い。非常にシンプルな仕掛けだが、展開も飽きさせないものになるし、コンフリクトもわかりやすく起こせるんだなーと思った。しかしながら、アンディの変貌に対するレイン(ケイリー・スピーニー)の複雑な感情は掘り下げ不足だし、チップを戻してアンディが簡単に復帰するというのは安易な展開に見えて気になった。あと、レインが「〇〇を助け出さないと」みたいな動機で動いてばかりなのはちょっとどうかねえ……と思う。
また、ゼノモーフはやはり一体だけで暴れてくれるほうが私好みである。今回は何体もうじゃうじゃ出てきてスリリングさに欠けるかなという気はするし、後半の「無重力血液回避ゲーム」はアホっぽく見えて、ちょっと白けた。また、フェデ・アルバレスが好んで仕掛ける四幕構成は映画の作りとしてはやはり冗長な感じがする。
吹き替えに関しては人気のある若手声優で固められており、アニメファンも囲いたいという意図が見えるキャスティングだ。戸松遥が主人公レインの声を担当しており、戸松は外画の吹き替えがメインではないのだが、抑制のきいた演技でけっこう頑張っていたと思う。私はアニメーション作品で見る戸松遥の演技が好きなので、どんどんこういう機会を増やしていってほしいなと思った。