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祖国に翼をのくりふのレビュー・感想・評価

祖国に翼を(2024年製作の映画)
3.5
【声の翼】

アマオリ・ヒンディー新作。インド独立の闘士、ウシャ・メータの伝記“風”映画。引き込まれ、とても共感できる物語ですが…もっさりする展開・演出でだいぶ、損していますね。

しかし、ウシャさんのことは本作で知ったので、それだけでも見てよかった。ガンジー主義者ゆえの頑なさが、当時は強さを増幅させたものでしょうか。

1942年、英国に対し“インドを立ち去れ”運動を始めたガンジーら指導者は逮捕されてしまうが…逃れた国民会議派の活動家は、どう結束したのか?…ここで成程!と感心ツールの登場。今でいえばSNS代わり。

物語後半は、英国の犬となったインド警察と、活動家たちとの、ツールを使った攻防戦に絞られて、面白さがわかり易くなります。声で結束するが、その声ゆえに追われる…この時代ならではのサスペンス。

一方、ウシャさんの伝記としては、あまりよくできていないのでは。史実と、定型にはめ込んだ改変が、上手くバランス取れていないような?

5歳でガンジーと出会い“信者”となり、8歳でデモに参加し英国に帰れ!と叫んでいたらしく、そりゃ筋金入り。映画版はそこには触れずw、も少しふつー女子に寄せている。オマケっぽいロマンスもサブストーリーで込めたりとか。主演のサラ・アリ・カーンは、割とふつーに嵌っていましたが。

英国万歳な判事である父親との家庭内対立も柱ですが、史実では父の退職後、ウシャは12 歳で既に、積極的に活動していたそうだ。5歳から続けられたのだから、周囲の助けも元々、あったのでしょうね。

この改悪感は、よくある、メロドラマ化して安っぽくなるあるあるとは少し違いますが、よい食材をもっと活かせたのでは?…と勿体なく思ってしまいました。

…等々、本筋に弱点を感じたものの、当時の再現は絵的にも、出来事としても興味深く、演出がダラダラしても興味は保てました。制服っぽいカディーの由来は今回、調べて知りましたが、ウシャさんはカディーしか着なかったそうですね。

映画は結局、国威宣揚へと向かいますが、自由を求める個人が集まった結果そうなる…という流れなので、皆がさけぶ“ジャイ・ハインド!”は、割と素直に響きました。

“無名の英雄は、誰よりも偉大な英雄だ”とは、確かにその通りかと。ユルイつくりでしたが、ウシャさんの行為はインドの独立を確実に助けていた…と、良く伝わる、善き映画でありました。

<2024.3.24記>
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