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アイス・ストームのくりふのレビュー・感想・評価

アイス・ストーム(1997年製作の映画)
3.5
【ふしだらな氷柱】

U-NEXTにて。70's、冷え切った家族“たち”が、肉欲でそれを紛らわそうとして、さらに冷えてゆくおはなし。

前年制作の『カラー・オブ・ハート』を再見したら、セットでこちらも見たくなったので。

トビー・マグワイアとジョアン・アレンの親子による、家庭問題炎上ってトコが同じだし、地続きに思える物語だから。アチラでは90'sから50'sを振り返るから、70'sの本作は、前後を挟まれるかたちだ。

童貞丸出しのトビー・マグワイアが、両作とも“まぐわい”映画の中心だってのもオモロイが、ジョアンさんはやはり上手い熟女優だ。ハリウッドは、この年齢層の女優さんは未だ、排除しがちだと思うけど。

そして、クリスティーナ・リッチが小粒のままで見事に光る。この翌年の『バッファロー'66』とは真逆な役だが、豊かな女優さんへと変貌中の頃か。冷ややかな物語の中、性への没頭がいちばん生々しい。

ただ演出は、アン・リー監督特有の余所余所しさがずっと続き、見ていて心は晴れない。舞台の氷結世界は監督のタッチにめちゃ合ってるが…。

寒い中、相手のポケットに手を入れ温かさを共有できるような一瞬を、どこかに含んでほしかったなあ。けっきょく本作の家族は低体温のまま、なあなあで終わる。

“まぐわい”的には、70'sはこれほど節操なかったかと呆れるが、サバービアで暇になった人たち限定の話だよね。まぐわっても熱くなれず、より冷えてゆく…。自業自得だけど、自省はしないのだろうね。

50'sの袋小路を描いた『レボリューショナリー・ロード』とソックリさんだが、なるほど、行き詰まったまま20年が過ぎて、腐っちゃったってワケだ。…と捉えると、妙に、腑に落ちる。www

“夜這い”の風習があったという日本のムラ社会に先祖返りしたようにも見えるが、まるで違う…。

映像の氷結美と、意外や豪華な役者さんの魅力をカタログ的に楽しむ分には、充分な質ですね。

<2024.4.18記>
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