zhenli13

トアのzhenli13のレビュー・感想・評価

トア(1949年製作の映画)
4.2
序盤からうとうとしてしまった。ギトリ主演作品定番の長台詞室内劇だなーと思いきや、最初のシークエンスを終えたギトリの部屋がそのまま舞台セットとなるシークエンスがめちゃくちゃ面白かった。先程まで部屋にいたギトリ、使用人、友達の妻でギトリの浮気相手がそのまま彼らの顛末を芝居として演ずる。それを客席から罵倒するのはこれまた先程ギトリに愛想を尽かして逃げ出したはずの恋人役のラナ・マルコーニ。「何で私たちのこと芝居にしてんのよ!」「あなたは電話のシーンを入れないと戯曲が書けないのよね!」とメタ構造に次ぐメタ構造の塗り重ね。舞台上からマルコーニを見つけた使用人(を演じてもいる)ジャンヌ=フュジェ・ジールも素で語りかけて観客の笑いをとる。

観客に囲まれて客席にいるマルコーニと舞台上のギトリを執拗にカットバックすることで、私的な痴話喧嘩が不特定多数の人々の場に拡散され、語りをもって公のものとして成形されていく不思議さーそもそも私的エピソードを拡大修飾し続けた物語こそギトリ作品でもあるーをまざまざと提示されたようで圧倒された。マルコーニの罵倒がこれまたMCバトルかのような小気味よさ。

マルコーニの退場によりフレームは収斂され観客はフレーム外へ消え、ギトリの部屋は再び芝居の「内側」へまた帰っていく。そのシークエンスと地続きで、同じ部屋が今度は主人公ギトリの部屋として登場する。

で、この後また寝落ちで気づいたらFINと…最後も面白そうだった…
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