天城越えのイワシのレビュー・感想・評価

おもしろかった。上階にある平幹二朗の印刷所まで、渡瀬恒彦が足を引きずりながらえらく苦労して階段を上って辿り着くと、示し合わせたかのように通過する新幹線が窓から見える。40年前の事件についての両者の心理的な差を、速度の差によって見せる。

殺人シーンのワンカット撮影がかなり良い。引きのショットで斜面を滑り落ちる殺人者と被害者を画面に収めながら、雨そして水面のきらめきをきちんと捉えている。服を剥ぎ取りながら刺し殺すってかなり異様。その前にある窃視者と動物たちの眼のモンタージュもびっくりした。