いたみ

蛇の道のいたみのレビュー・感想・評価

蛇の道(2024年製作の映画)
-
1998年版を見たのは少し前なので並べて比較しているわけではないけれど、そこまで相違はないと思った。流れはほぼ同じ感じ。しかし、個人的に1998年版で一番ぐっときていた要素「マジで見たこともない数学を教える謎の塾講師設定」が消えたことに象徴される「腑に落ちすぎる改良化」が、どうにも格好良さを半減している気がした。
哀川翔・香川照之と比べるのももはやめちゃくちゃだと思うんだけど、どうしてもあの凄み、狂い方は真似できない。柴咲コウとダミアン・ボナールには、ずっと納得ができる。何でそうしているか理由は分からなくても、その深い悲しみや迷い、恐れはずっと感じ取れてしまうから、全然不思議じゃない。1998年版は、それを超えた狂気があった。そこまでやんなくていいじゃん、と思う納得のできなさが、人間の常識の先にある憎悪と受け取れた。いみわかんなくて、すごく格好良かった。
もちろん本作の方がおそらく見やすく、万人に理解される良い作品かもしれない。良いショットもたくさんある。めっっちゃ意味深にルンバが出てくるところ、声出して笑ってしまった。
完全な好みの話で、私は恐れと迷いの中強く進む人間より、それをねじ伏せて狂気で進む人間のほうがスクリーンにおいては好き、というだけの話。

ただこれは確実に、黒沢清にコントロールできる部分の話ではないと思うので(内面の演技は求めていないはずだから…)、同じ監督がそんなに変わらない感性で撮っても、俳優の演じ方が違うとこうも変化が生まれるのだという、面白い例としてすごく比較されるべきだと思った。
いたみ

いたみ