ちょっと引っ掛かる点はあるが、全体としては良かった。まず、野球をしているところに雪が降る最初のショット。ここで心をつかまれた。各ショットが淡い絵の具で描いた絵のようで、どことなくウェス・アンダーソンを思い出した。また、スケートをしている姿がとてもきれいに映されている。中西さんのスケートはカメラワーク含めとても素晴らしい。
本作は「聖域」の話だと思う。自然光を上手く取り入れた映像で、「月の光」の曲の効果も相まって、あのスケートリンクがあの3人にとっての美しい聖域となっている。それは最初はとても美しくて特別な空間になっているが、それ故に終盤の「聖域の崩壊」による残酷さが際立つ。
子どものちょっとした嫉妬からこの聖域が崩壊する。それを儚い美しさを持った物語として描いている。引っ掛かるのは、ここにクィアの要素が加わっている点。マイノリティが排除されて終わる、という悲劇なだけの存在なのはいかがなものかと思う。この映画の時代設定は2000年代前半だけど、今の時代にこれをやって意義があったのか、と言えば微妙なラインではある。
一応、最後にまた2人が出会い、新しい関係を結ぶことを匂わせて本作は終わるが、これはこれで監督の「置きにいったな」という「賢しさ」が感じ取れた。