Maoryu002

イカとクジラのMaoryu002のレビュー・感想・評価

イカとクジラ(2005年製作の映画)
3.4
1986年のブルックリンが舞台。
離婚を迎えた夫婦二人と、その子供二人の家族四人の生活を描いた作品。

いきなり「ママ対パパ」でスタートして、明らかに不和を抱えた夫婦の表情が映し出される。
極端ではあるけれど現実にありうる家族の姿、しかも欠点の多い父親と母親とそれに影響されて悩み乱れる子供たちの姿を、隠したくなるような行為も含めてあからさまに映像にしているのがこの映画だ。

子供に離婚のことを責められて、「夫婦の問題よ!」と言い切る母親の姿はアメリカ的で、日本では少し違和感があるのかもしれない。ただ、現実はそのとおりで、親子の絆と夫婦の関係は別なのかもしれない。そのあたりの前提や意識を再定義させられる。

この映画でひときわ光っているのが若き日のジェシー・アイゼンバーグだ。
彼が演じる長男が幼少期に恐ろしくて正視できなかったイカとクジラの格闘。ラストシーンで、今はしっかりとそれに向き合える姿がある。つまり両親の痛ましく醜い戦いを受け止める子供の姿がそこにあるのだと思う。

こういった、ささいだけれど現代の人々にとって深刻で身近な問題を映像化することに長けた監督、ノア・バームバック。
彼はあちこちに「しかけ」を散りばめていて、「勝手にしやがれ」の引用がその一つ。夫婦が二人で観に行った映画はいい思い出として使われず、「最低だ」という元妻への言葉でしかない。
最後までハッピーエンドではなく、起こりうる事実をありのままに見せる監督のこだわりを感じた。
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