楽しんでね。この世を、
暴力的で気分屋の英治(髙橋里恩)。
温厚そうに見えるがどこか気持ち悪い光則(清水尚弥)。
寡黙だが一番危険な渉(坂東龍太)。
『若武者』を創り上げた、二ノ宮隆太郎監督の中にある闇を三分割したという彼ら。
ほぼほぼ、英治がしゃべり続ける本作。それは時に正論で時に暴論。見知らぬ人に歩きタバコを「副流煙が出るから」と注意したかと思えば友達の前で自分が吸うし、ただ歩いていた人に難癖をつけて殴る。
人間の暴力的で猟奇的な部分を表している彼を嫌う人は多いだろう。
光則は自分自身、渉や英治のようなヤバイ人間ではなく善人なんだと介護施設で働くが、自分もヤバイ人間なのは分かっている。異常者だと思われたく無い。普通でありたいと願う人間の醜い部分を丁寧に描いた人物。
そして一番危険な渉。言葉数こそ少ないが、心の中にある怒りや憎しみの量が半端ではない。ストレス社会を生きる人間の闇の部分で形成された彼。
そんな彼に感情移入してしまう人は多いと思う。
三人のバランスがいいし、全員がヤバイ。しかし、どこか他人事ではない。そんな作品。
「楽しめる」そんな世は来るのだろうか。