2018年からの三年間にわたるベイルートの反政府運動を捉えたドキュメンタリー。反権力を掲げた国政選挙で当選したにもかかわらず、当局の介入によって落選させられたJoumana Haddad。反政府デモに身を投じ前線に立ち続けた若きミュージシャンのPerla Joe Maalouli。往年のレバノン内戦のきっかけをつくった往年の活動家のGeorges Moufarrejの三人を中心に描く。未曾有の経済危機、政治家の汚職と腐敗、そしてコロナ禍で最後に追い討ちをかけた2020年のベイルートの爆発。こうした事件を市井の人々はどのように生き、声を上げていたのかが鮮やかに活写されるが、決して希望に満ちた作品ではなく、むしろ年を追うごとにペシミスティックな感が強くなっていく。直近でもレバノン国内は、イスラエルとのテロ合戦で緊張が高まっているとは報道にあるとおり。政治的闘争とは何か、レバノンの政治史をつうじて体得させる志の高い作品。