tristana

黒の斜面のtristanaのレビュー・感想・評価

黒の斜面(1971年製作の映画)
5.0
サファイアの指輪と結婚した岩下志麻は、夫が課長に昇進するかもしれないと聞いておもわず欲情し、鼻息も荒く家電のカタログを見ながら「あーあ、何にしようかなあ。セントラルヒーティングかしら。課長になったらずいぶん前借りできるんでしょ?」と皮算用するが、対する夫の加藤剛は勤勉実直、ろくに女も知らないわりに自殺未遂の女と出会ってチャンスと見るや一丁前に愛人として囲い(ただし愛人を選ぶセンスは最悪、もっともこんなチャンスでもなければそんな洒落たことはできないだろうが)、そのくせ殺そうかどうか散々迷った挙句の別れ話もシャツにネクタイを締め、メガネをかけて正装しなければ切り出せないほどの小心者で、「自分の葬式を目撃」してもなお妻や上司に無条件に許される場面ばかり想像する図々しさも持ち合わせているが、現実に目を向ければ帰るも地獄留まるも地獄、そんな彼を待ち受けている映画としては意表を突くかもしれないが、実際にはありそうな何よりも怖ろしい結末はまるでシャーリイ・ジャクスンか何かの短篇のそれのように鋭利な切れ味を持つ。

タカシ
すべて許す
連絡待つ
ケイコ
tristana

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