劇場の年齢層はやはり全体的に高い感じはあったが、若い人も結構いたかなという印象。伝説として名前だけ知っていて興味があったお客様もいたのかと思う。
職場で使用していたウェブプラウザのスキンに「狂気」のジャケットを使っていたが、バンドを知ったのは既に成功を収めたスタジアム級に客が集まるアーティストだったので、ミーハーで特別な思いはバンド(メンバー)にはなかった。強いて言うならケイト・ブッシュの面倒をみたデヴィッド・ギルモアぐらいである。
内容は主にインタビューで構成された映画であったが、逆に思い入れががない分、元メンバーや家族による証言から客観的にシド・バレット周辺の人間関係と人となりを知り得る事ができたのではないか。
本作を観る前後でシド・バレットがピンク・フロイド時代に携わったシングル、アルバム「夜明けの口笛吹き」、脱退後のソロである「帽子が笑う…不気味に」「その名はバレット」を一通り聴き直したが、バンド時代はフラワームーブメントの全盛期なのか、分かりやすいサイケロックという印象を感じた。そして脱退後のソロとなると激しさは楽曲よりも自身の内面に向かっている転調気味のサイケなフォークという世界観であった。
中でもシド・バレットの曲で好きな曲なのはピンク・フロイド時代になるが、アルバムの最後に飾る「BIKE」という曲が素っ頓狂で記憶に残る。実はこの曲を知ったのは、P-MODEL中期のアルバム「ANOTHER GAME」に収録して聴いたのが最初である。平沢進とシド・バレットの関係に違和感を当時は感じていたが、後の「カルカドル」からの神経症的な楽曲を鑑みれば、平沢の体調不良が起きる何かの予兆だったのだろう。
インタビューで構成されたドキュメンタリーとしては凡庸で及第点ぐらいであった。時折セクションごとのイメージ映像に予算の低さを感じてしまい、気持ちは分かるが格好は少し悪かった。
麻薬(幻覚剤)の乱用が原因による脱退ではあるが、シドの奇行があまり具体的に語れられかった点や、医学的な病態を個人的には知りたかったので掘り下げが足りない感じはあった。
なぜ故にシド・バレットが取り扱われるのか? と今でも疑問は尽きないが、当時のバンドメンバーや実妹、元恋人たちが真摯に話してはいたが、やはり妹からの証言が肉親という関係もあり冷静さと真実味があった。そのため隣町のどこかにいそうなアダ名の付いた風変わりなオジさんが分かってしまい、皮肉にも彼のカリスマ性も薄まってしまったのが残念ではあった。
シド・バレットのピンク・フロイド内の立ち位置においては異論はあるだろうが、後にバンド内におけるギルモアとロジャーの泥沼の確執を知っている身としては、巻き込まれずに良い時期に脱退はできたのではないだろうか。脱退後にバンドは世界的な成功をする事となったが、シドの2枚のソロアルバムはギルモアたちの元メンバーの献身な協力がなければ完成はされなかっただろうし、彼は病んではしまったが、それでも人々に愛される魅力と天性の創作を同様に心得ていたのだろう。
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Shine On You Crazy Diamond
クレイジー・ダイヤモンド
作詞:ロジャー・ウォーターズ
Remember when you were young
若かった頃を思い出してほしい
You shone like the sun
お前は太陽のように輝いていた
Shine on you crazy diamond!
輝け、狂ったダイヤモンドよ!
Now there's a look in your eyes
今、お前の目にはある種の表情がある
Like black holes in the sky
空の中のブラックホールのように
Shine on you crazy diamond!
輝け、狂ったダイヤモンドよ!
この歌詞(一部)はピンク・フロイドの曲「Shine On You Crazy Diamond」曲名の頭文字でSYDとなる。
元メンバーのシド・バレットの事について作られた楽曲。(ロジャーは否定をしているらしいが。)
[アルバム『炎〜あなたがここにいてほしい』に収録]
https://www.youtube.com/watch?v=cWGE9Gi0bB0
なんかロジャー・ウォーターズと俳優のリチャード・ギアは似てるな。
[ヒューマントラストシネマ有楽町 18:35〜]