このレビューはネタバレを含みます
巨大セットを縦横無尽に走り回るスターたちに映画と古典芸能の飽和を見る、軽々しく使いたくない言葉であるが本当に多幸感に溢れている。
話が進むにつれて構造がミニマル化し、部屋を往来する狂言回し=佐平次によって次々と空間が接続されていく映画の奇跡、ただ自分の"生"にしがみつく厄介な男を煙たがりながら周囲はいつの間にか彼を必要としてしまう、一人の(強引な)介入にはじまり彼の離脱で幕を閉じるという『素晴しき放浪者』的図式が気持ちいい。
ドラマが専ら屋内に限定されてきたここまでの映画世界からすらも逃げ出すように画面の向こうへ走っていくあのラストシーン、そこに襖や壁はないが一本道ではなく曲がり角であり凡そ開放的な幕引きには相応しからぬ雰囲気に一抹の不安を覚える。
彼がこの先どうなるのかは知る由もないが、咳き込みながら死の象徴である墓石すらも踏み散らし、死という概念からも逃げていくような後ろ姿はやはり監督自身と重なって見える。そう考えると「俺はまだまだ生きるんでい!」が泣けて泣けて。