《侍の映画》、Vol.11。『カムイ外伝』。
これもまた『どろろ』しかり、侍の映画ではない、忍びの映画。マイルールでよしとする。
侍でもなく、お百姓さんでもなく、人で非の身分に生まれたカムイ。
自由を求めて、自由を勝ち取るために強くなるがために忍びに身を転じる。
忍びに身を転じて、色んなことに巻き込まれて人を殺める。それも自由のためと思うものの、何かが違う。
そこで、忍びの世界を抜ける。“抜け忍”。
抜け忍は、掟により、死が待つ。“追忍”と呼ばれる仲間の忍びに追われ、命を狙われる。
どこへ行こうと追われる。地の果てまで追われる。それが止むことはない。
そんな逃げに逃げ果てた先に、とある貧しい農民に出くわし、その村に拾われる。
そのおかしな農民と村に次第に心を落ち着かせる、、、。
しかし、“抜け忍”に安らぎ、安全、幸せ、自由などない。
そう言わんばかりに追っての影が、、、。
村や人に心を寄せれば寄せるほど、カムイは守るものができ、冷徹さを失い、防戦一方で弱くなる。
それを許してくれない忍びの掟。
ここぞとばかりにあの手この手でその弱みにつけ込む。
小雪が一足先に“抜け忍”の先輩として流れ着いていているが、この小雪の、尋常ならざる猜疑心。
とにかく何でも疑う。
何もするつもりもないカムイにすらしばらく心を許さない。
その猜疑心を持ってすら、大切なものを持ってしまうことで油断を招き、心を惑わせ、目を曇らす。
本当に大切な人を守りたいだけ、誰にも危害を加えず、つつましくても安らかに生きたいだけ。
そんな取るに足らない願いさえ、カムイにとっては途方もなく遠き果てしない願い、、、。
かなり前半戦は忍びのアクションに趣向を凝らす。なかなか忍びらしいアクションと戦い。
ひたひたと俊敏に、手際良く。
カムイの得意技、飯綱落とし、霞斬り。
俊敏と言いつつ、飯綱落としはかなりの大技。力技の必殺技。
そんな見た目でかなり圧倒してくる。
後半は、そんな手際の良さと力強さと打って変わってカムイの内面の揺れ動きや、それを利用しようとする心理戦や酷い戦い。
この前半のテンポの良さと後半の後味の悪さがなかなかカムイの生き様と願いならではの作りと言える。
この村の娘の大後寿々花の妙な色っぽさにカムイと一緒にほだされる。
松山ケンイチと小雪、今や夫婦の徐々に近づく忍びならではの距離感。
忍びと言ってもやたらと豪快にやってくる伊藤英明。伊藤英明は真面目なヒーローでも、敵か味方かよくわからんキャラでも何でもいける。
そして、この手の映画で欠かせないある意味でこの狂った世界を産んだような存在として描かれる暴君、佐藤浩一。
なかなか傑出したキャストたちが、ただの悪い敵を打ち負かす弱者の絆と執念の勧善懲悪でもない物語。
1960年代のアニメ。
『どろろ』しかり、なかなか色んな意味で一筋縄で語り尽くせぬ映画。
それにしても、魚の擬似餌が欲しくて領主の愛する名馬の足をぶった斬るって、、、あんた!
そこからの展開とカムイや他の連中の顛末を見れば明らか。
無邪気なあんたが1番罪深い。