Genichiro

花子 4KのGenichiroのレビュー・感想・評価

花子 4K(2001年製作の映画)
4.5
『SELF AND OTHERS』『阿賀の記憶』しか見たことなかったので他の佐藤真作品を見たくてなんとなく今作を選んだけど、かなり衝撃を受けた…自閉症の娘が自発的に起こすアクションの結果として絵があり、記録として残されていくものとして母親が撮影する食事の痕跡が対比される。今作で最も衝撃を受けたのはぐずる花子を映した長回しのカット。3人に対してほぼ正対する場所でカメラを回していて、後半花子の動きに合わせて(彼女から見て右側に)カメラが回り込んでいく。いかにも日本の住宅という感じの決して広くはないリビングで長回しの中でカメラが位置を変える時に一気に暴力性が立ち上がってくるのが凄まじい。高架下で花子と母親が散歩していると、二人の間を女子高生が通り過ぎる。その瞬間のパラレルな時間の流れにハッとさせられる。そして、後半で花子がぐずる様子を映していたカメラがそのまま部屋を抜けて玄関の方へ、そこからなんと階段を上って二階へ!!三味線を弾く父親が映される、凄まじい。カメラを意識しない(ように振る舞う)二人と時折カメラを見やる花子の対比もドキュメンタリーならではの緊張感と面白み、おかしみがある。坂道を上り、カメラの横を通り過ぎる長回し。画角から見切れる最後の瞬間に花子がカメラに目を向ける。その時間の美しさ。ほんとになんと言っていいのか分からないけど見る価値はあった…(モノローグでしか出てこない姉の不在も強烈)。これはなんなのだろう…今も自分の中で消化できていない。しかしほんとうに見て良かった。こういう作品に出会えることが映画を見続ける醍醐味だと思えた。
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