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死刑執行人もまた死すのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

死刑執行人もまた死す(1943年製作の映画)
3.8
原題『Hangmen Also Die!』 (1943)

監督 : フリッツ・ラング
原案 : フリッツ・ラング、ベルトルト・ブレヒト
脚本 : ジョン・ウェクスリー
撮影 : ジェームズ・ウォン・ハウ
編集 : ジーン・ファウラー・ジュニア
音楽 : ハンス・アイスラー
出演 : ブライアン・ドンレヴィ、ウォルター・ブレナン、アンナ・リー、他

ナチス・ドイツ占領下のチェコで1942年に実際に起きた、ナチス・ドイツのベーメン・メーレン副総督、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件「エンスラポイド作戦」を題材にしたサスペンス映画名作。

「反ナチ」「レジスタンス」映画。

陰影が印象的なノワールタッチの素晴らしい撮影と二転三転するサスペンスフルな脚本。
ナチス、ゲシュタポ側の人間の悪役演技演出が上手いので非常に憎たらしいのはさすが。

そして、ナチスの圧政には屈せぬと誓うプラハ市民の高潔な精神性は感動的ではあります。

が、

後半の展開はレジスタンス視点からすればナチスを欺き、裏切り者を嵌める様は痛快なカタルシスを得られますが、(裏切り者なので自業自得なんだけど…)チャカ視点からすればめちゃくちゃホラー。それをこれでもかと見せつける。
最後は、少し可哀想過ぎない?とも。

それ故に、ナチス、ゲシュタポの蛮行には「怒り」を感じましたが、チャカを暗殺犯に仕立てあげる市民達の「嘘」「策略」にはなんとも言えない「恐怖」を感じました。

この辺の表層的「恐怖」と、その奥に隠された見えない「恐怖」のバランスがフリッツ・ラングはホントめちゃくちゃ上手い。
本作は「ナチス」の恐怖と共に「群衆」の恐怖を描いていると思います。

この群衆の恐怖というテーマは『M』、『激怒』等でも描かれていて、フリッツ・ラングの作家性と言っても過言ではない気がします。

だからこその複数形となっている、原題『Hangmen Also Die! 』にフリッツ・ラングのメッセージの真意、風刺、皮肉、が隠されているとも感じました。

やはり、一筋縄ではいかないフリッツ・ラングが脚本に携わった監督作品はべらぼうに面白い。
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