ソーダー

教皇選挙のソーダーのレビュー・感想・評価

教皇選挙(2024年製作の映画)
4.4
前ローマ教皇が死に、世界中からバチカンに集まる枢機卿達。
彼らは世界最大宗教組織の最高指導者でありながら、スーツケースを転がし、携帯をいじり、タバコを吸いポイ捨てするなど、のっけから極めて世俗的。

それら意識的カトリック描写の後、次期教皇選挙がキックオフするが、これがまた枢機卿達、ワチャワチャする。

賄賂、性加害、人種差別等、相手のスキャンダラスを調査し、明るみに出るよう策を練り、足を引っ張り合う。
バッタバッタ候補者が失脚するため、どうなるかと言えば選挙が終わらない。

極め付けは主人公であるローレンス。
彼は皆が認める誠実な人物で、この教皇選挙の"仕切り"を担っている。
しかし、信心深い彼は、この教皇選挙を"善いもの"として導くために、候補者のスキャンダラスの芽が出れば、時にはルールを侵してまで徹底的に調査し、それらを公表することで、場を掻き回す。

今現在、地球上で生じている"茶番劇"の縮図が、ここで描かれている。

外野もヒートアップ、この選挙の関連で各地で爆破事件が生じ52人が死亡する。
しかし枢機卿達は、繰り返すが、外野を他所に、ワチャワチャし続けるのだ。

この作品は、宗教、はたまた政治といった、"争いの源"となり得る物が、"本当にその値があるのか"を問いかける。

警察に護衛され、サッカー選手がアウェイの試合に乗り込むかのようにバスに乗せられ次の選挙場に誘導されているシーンなど、宗教的"神々しさ"は、とことん排除される。

観ながら、よくぞここまでやり切れるものだと少し怖さすら感じた。
日本の天皇問題をこのタッチで描くような作品がもし生まれた場合、それはすさまじいことなるだろうと思うからだ。

最終的に選ばれた教皇に何を感じるかは、観た人次第、様々であろう。

現実世界において、極右もリベラルも、何かもう同じに見えてきている自分は、今の段階で、光を感じることが、できずにいます。