このレビューはネタバレを含みます
女性初の英仏海峡横断を果たした、トゥルーディ・イーダリーの半生を描いた伝記映画。
舞台となるのは1905年のアメリカ。
当時は女性が水泳をする事自体がはばかられるという、今ではちょっと信じられない様な時代でして。
沈没事故で(泳げない)女性の死者が多かったというエピソードや、女性差別と言うよりも男性優遇な世界観は興味深いものがありました。
ちなみに、女性の水泳チームが室内プールで練習していたのも、人目を避ける意味合いがあったんだとか。
そんな中で、主人公トゥルーディは水泳に挑戦するわけですが、最初から才能があったわけでもなく、落ちこぼれなところから始めるのが良かったですね。
努力を重ね、少しずつ成長していく姿は、素直に応援したくなるものがありました。
また、練習費用を稼ぐ為に母親が内職して稼いだり、トゥルーディ自身も石炭運びをしたりと、男に頼らない…女性の自立が描かれるのも印象的な部分。
主人公の成長とフェミニズムを連動して描いているのが上手いし、これが本作のテーマとも言えるでしょう。
映画の後半になると、いよいよ英仏海峡横断への挑戦が描かれます。
コーチのウォルフがあまりにも無能なんでイライラしていたら、薬を盛るという妨害工作に出る始末…。
なんともまぁ酷い話ですが、女の成功が許せない男というのは、何時の時代にもいるものなのでしょうね。
そんなミソジニストにも負ける事なく、再挑戦を決めるトゥルーディ。
アウトサイダー同士で気が合ったのか、トゥルーディのサポートをするバージェスの存在も良かったし、父親と別れるシーンを入れる事で、ある種の親離れを描いているのも象徴的。
そして、何より姉のメグですよ。
クラゲで傷ついた彼女を励ます為に、海に飛び込んで一緒に泳いで見せると。
まさに“リアル・シスターフッド”という感じで、グッと来るものがありました。
ラストのトゥルーディの為に火を焚く演出もベタと言えば、ベタなんですが、やっぱり感動してしまうものがあって。
トゥルーディ自身の頑張りは言わずもがな、彼女1人だけでは、ここまで到達出来なかったわけで、特に母親や姉、水泳のコーチら女性の連帯は大きく、この成功は彼女達の成功でもあるのでしょう。
もっと言えば、幼い時に溺れて亡くなったという母親の姉妹が、トゥルーディを水泳の道に導いたとも言えるので、彼女の無念を晴らす事にも繋がったんじゃないかな。
ちなみに、同じ女性の長距離スイマーを描いた『ナイアド その決意は海を越える』の主人公も諦めの悪いタフな女性で、トゥルーディと似たものを感じたし、トゥルーディの魂は彼女に受け継がれたのかな?なんて事も思いました。
まぁ、フェミニズム云々は置いとくとしても、単純に見ていて熱くなれる話だと思いますし、驚くべき実話として見て損のない作品でしょう。
スター・ウォーズ以降のキャリアが見えなかった、デイジー・リドリーが当たり役を掴んだ事も嬉しかったし、今後の彼女の活躍にも期待ですね。