トムヤムくん

ANORA アノーラのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)
4.7
大傑作すぎる。下品だけど上質なコメディ映画。爆音のストリップから罵詈雑言が飛び交う車内、そして無音のエンドロールへ。夢から覚めるのも、炎が消えるのも一瞬のように、アノーラの華やかなシンデレラ・ストーリーが呆気なく終わりを迎える。ショーン・ベイカーらしい、意地悪だけど優しい映画だった。

マイキー・マディソンというスター誕生の瞬間を目撃できたのも嬉しい。特にあのラストシーンのインパクトもすごい。絶望を紛らわそうとしてるようにも、まだ僅かな希望に縋っているようにも、イゴールへの対価として体を差し出しているようにも見える(そもそもあれがアノーラにとっての愛情表現とも言える)。ああ素晴らしい。

圧倒的今年ベスト。2020年以降に公開された映画の中でも3本の指に入るくらい好きな作品だった。一夜明けた今でも興奮が冷めやらない。