ジョバンニ

ANORA アノーラのジョバンニのレビュー・感想・評価

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)
4.1
アカデミー賞5冠おめでとう!マイキーマディソンの演技が素晴らしかった。R18指定の映画でストリッパー役となると、あそこまで体当たりで演じなければいけないんだ。話し方や振る舞いも、本当にプロの水商売の女性みたいで説得力があった。

結局、アノーラはイヴァンを愛していたわけではないと思う。序盤は彼に好かれそうな可愛らしい女の子を演じていたのに、トラブルが起きてからは急に彼よりも逞しくなる変化がリアルだった。特に水商売のような身一つを武器にお金を稼ぐ人たちは、脆さもあるけれど、自分を守る術や声を上げる力を持っていると思う。日本にはこういうタイプの女性はあまりいない気がする。

アノーラが最後に怒ったのは、イヴァンを愛していたからではなく、自分を軽く扱われたことへの怒り、プライドの問題だったと思う。人生はそう簡単にうまくいかないけれど、アノーラのようにしっかり戦い抜く姿勢は大事だと感じた。イヴァンのように自分の力で生きたことのない人が、毎日戦いながら生きているアノーラと合うわけない。多くを語らないけれど、常に彼女を気にかけていたイゴールはかっこよかった。

社会問題を提起しているけれど、ストーリーはラブコメ、でもR18指定という意外性のある組み合わせが受けたのかな。オスカーは静かで詩的な映画を好むイメージだったから、ポップ寄りの作品が受賞したのは驚いた。ちゃんとコメディ要素もあるから、物語の起伏が分かりやすく、長時間でも見やすい。