浮き足立った軽薄なシンデレラストーリーは、もうこの現代では完全に絶滅したということ。
夢物語に足を突っ込み喜びながらも、スマートに振る舞う序盤のアノーラが、結婚した途端感情を露わにして飲まれる様は哀れに思ったが、一貫した芯の強さが物語を輝かせていたと感じる。
観客すらも「ありえないでしょ」と馬鹿にしている中で一縷の望みに賭け、他者からの憐れみの一切を拒むその強さ。良いヒロインっぷり。
後半のドタバタが楽しすぎる分、前半のブルジョワジーな時間が冗長にも感じて、もう少し短くできたのでは?という気がした。
アノーラに注目が行きがちだけど、ヴァーニャもつくづく哀れな存在だった。
両親から逃れてアメリカ人になりたいと思ったのは、本心だと思うし、結婚直後の喜びっぷりは心底だと思う。
金目当てで寄ってくる友人と、偉大な両親から本当に解放される手立ての一つだったのにね。
誰が一番幸せなんだろうか