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セーヌ川の水面の下にの消費者のレビュー・感想・評価

セーヌ川の水面の下に(2024年製作の映画)
3.9
・ジャンル
ホラー/社会派/アクション/パニック/サメ

・あらすじ
環境保護の為、クジラやサメを追跡し研究していた海洋学者のソフィアとチームの面々
そこで彼らはサンプルを取る為に乗組員達に潜水させていた
しかし人畜無害なはずの巨大化したサメ、リリスが彼らを喰い殺してしまう
そして3年後、見失っていたリリスに取り付けた探知機の在処を教えると海洋保全団体の若き代表ミカがソフィアの元に
彼女の目的はリリスを生かす為に協力を求めての事だった
リリスがセーヌ川に居着いていた為だ
だがろくに現場を知らない未熟な彼女の計画は無鉄砲な物でやがてオリンピックの宣伝行事であるトライアスロン大会が行われる中、セーヌ川で起こる惨劇を引き起こす事となる…

・感想
パリでのオリンピック開催に合わせ製作されたセーヌ川を舞台とするサメ映画
今年の話題作だったので鑑賞
奇しくも閉会式のタイミングになってしまった…w

気候変動や環境破壊によるプラスチック問題、無責任な政治家、環境保護における過激派の存在
現実に基づき様々な社会問題を軸に話が描かれながらもサメ映画に求めるダイナミックな攻防や殺戮も見せくれる優秀な内容だった
また本作のサメの新種第一号である個体の名前がリリス、更に地下墓地に繋がる大聖堂を巣としていたりと聖書を下敷きにしている部分も面白い
恐らくはアダムを現代人、イヴを目先の利益、リリスがそれの引き起こす災厄を象徴していると思われる(キリスト教には明るくないので間違っていればご指摘下さい)

特に印象的だったのがメインの登場人物達の人物像
ソフィアは海洋学者という事もあり環境保護を是としつつも人命と海洋生物の命の間で揺れる事もなくフラットな意識を持つ
対して海洋保全団体の代表ミカはリリスを守ろうという目的と自分の知識への過信から暴走し最悪な事態を巻き起こす
さながらシーシェパードやグリーンピースの様な印象が強く最大の戦犯なのもジワジワ来る…w
そして大量死傷事故の隠蔽や水上警察への責任転嫁など政治家の悪いパブリックイメージを煮詰めた様な市長
これがまた最悪なんだけど実際あんな物なんだろうなぁ…
それだけに最後は溺死でなく喰われて死ぬか責任を問われて暴徒に殺されて欲しかったけど…w

また何と言ってもサメが原因で相次ぐ事故がダイナミックなだけでなくゴア描写も割と力を入れていたのが嬉しかった
しっかりグロくはありつつもスラッシャー的な描き方をしていなかったのはあくまで人間を悪とする為なんだろうけど、より恐怖を感じさせる「ジョーズ」の様な雰囲気があっても良かったかなぁとも感じはしたけど
あとはパニックに陥る中で序盤に出て来た不発弾をしっかり伏線として機能させていたのも良かった

全体的には評判通り真摯に作られた現代的なサメ映画という感じ
ただまぁ「ジョーズ」と並ぶ程に怖いかと問われるとそこは微妙
とはいえ人間の愚かさが事態を悪化させ続ける展開は好き
完全にバッドエンドなのも最高
単為生殖で急速に成長するって設定がより悲壮感を煽るのも最高
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