評判良かった分期待はずれ。最近の堤幸彦は外連味を出そうとすればするほど滑るので、20年前なら向いていただろうこの原作は、今や不向きだったのでは。
アラタが結婚を切り出すまでの性急さに面くらったが、2時間ずっとダイジェストって感じ。中々にこんがらがった話なので頑張ってまとめた方だとは思うが、没入できたとは言い難い。
漫画の演出そのまんまにモノローグに頼りまくってるのも悪手。堤幸彦自身この手の演出に頼るとテレビレベルのそれになりがちな上に、主演の柳楽優弥が全然ノッてないのでなんとも平坦なモノローグに終始している。コメディに片足突っ込む覚悟でオーバーアクトした方が、起伏を作れたのではないだろうか。
あと法廷シーンの演出が苦手っていうのは堤監督「ファーストラヴ」でも如実に出ていたと思うのだけど、今回もそう。劇伴やカメラワークで盛り上げようとするのだけど、全部過多だと思う。むしろ台詞・芝居を聞かせる・見せるべきだと思うんだよな法廷での会話劇。今のやり方だとむしろ会話を邪魔しているような。
二転三転する物語の面白さ自体はあるし、しっかり汚した黒島結菜のつけ歯に代表されるように、テーマに対して真摯なところは沢山あるだけに惜しい。個人的にグッと来たのは知能指数検査に対する男2人のリアクション。さりげないんだけど、こういうセリフがあるかないかでテーマの解像度や共感度が変わってくる。そんな繊細なところに目を向けられているのは良いなって。
漫画的と現実的の間を行き来する展開に俳優陣も苦労してそうな中、ドンピシャな演技をする市村正親が流石。あと佐藤二朗は誇張演技なのにやたら生々しくて、良い意味で生理的嫌悪感が凄い。この2人がベストアクトかな。オリヴィア・ロドリゴの主題歌は書き下ろしかと思うほどのぴったりだった。