《人間の根源的な願望を赤裸々に描く》
本作は独特な作風で、唐突な展開も多いが、河合優実、金子大地、寛一郎が醸し出す存在感が素晴らしく、観ていて飽きることはなかった。主人公のカナは、当初は破天荒で身勝手な人物だと思っていたが、そういう一面もあるが、現実離れした変わり者というわけではない。ハヤシやホンダも、意外と身近にいそうなキャラクターだと感じた。カナとハヤシの関係も、確かに激しい部分はある。しかし暴力的というよりは、自分自身と相手を守りたいという気持ちの表れに見える。こうした普遍的なキャラクターがスタイリッシュに描かれているため、違和感なく受け入れることができた。
3人の暮らす空間も、洒落た照明や家具がある一方で、雑な部分もあり、ペットボトルから直接水を飲むシーンや、ファストファッションの服装など、生活感の描かれ方にも親近感を抱く人は多いだろう。
「ナミビアの砂漠」で生きる動物たちが、乾いた大地でわずかな水飲み場を見つけ、そこで力強く生きる姿は、人生そのものと重ね合わせられる。苦しい日々の中でも、たくさんではなくとも僅かな幸せに満たされたいと願うが、そのオアシスを見つけられているのかすら分からない。だが、「幸せになりたい」「生きたい」という溢れんばかりのエネルギーをどう消化すればいいのか分からず、不安定で自分を抑えきれなくなることは、誰にでもあるはずだ。本作は、異色ながらもそうした人間の根源的な願望を赤裸々に描いたドラマだからこそ惹きつけられるのだと思う。