猫脳髄

新・三茶のポルターガイストの猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.0
2022年の前作に続き、ライター、YouTuberで元TOCANA編集長の角由紀子が、三軒茶屋の古スタジオで頻発する心霊現象を検証するドキュメンタリー。監督に豊島圭介、ナレーションに東出昌大を迎えるなどパワーアップしており、ややごちゃごちゃしていた前作よりもスッキリとしたつくりになっている。

前作でも述べたが、映像を媒体にしている時点で、フェイクとの弁別は原理上不可能であり、事の真偽は括弧に入れるしかない(というか、論点にすらならない)。いくら超心理学者や物理学者を投入して徹底的に検証させたとしても、それ自体、映像のなかの出来事以上でも以下でもなく、真実性を補強するものではないことに注意を要する。さらに、製作側に認知バイアスが生じており、スタジオ側の主張に肩入れすらしているのである(※)。これではそもそもドキュメンタリーとして成立していない。

よって、本作の見どころはやはり表現の新規性というところに帰着するが、これも前作以上の不可解さを見せはするものの、露骨な逆さ吊りの亡霊で驚かせようとするのは、ドキュメンタリーの体裁に亀裂が入るほどの失策ではないのか。再現性こそ真実性の保証という主張であったにもかかわらず、表面的なインパクトでイレギュラーな事象をクロースアップしたのは作品構造の否定につながりかねない。前作くらいのいかがわしさがちょうどよかったのだが、やや興ざめしてしまう。

※心霊事件史を紐解くと、善意で信じ込んでしまった調査者による擁護が、偽装の露見を遅らせてしまった事例が山ほどあることは指摘しておきたい
猫脳髄

猫脳髄