あい

家族Xのあいのレビュー・感想・評価

家族X(2011年製作の映画)
3.5
図書館のDVDコーナーを物色していたら発見した、掘り出し物。
少ない台詞、長回しのシーン、背後から追いかけるような撮り方で、専業主婦・路子の壊れていく過程を丁寧に追いかけた佳作。

自分の家庭、それが世界のすべて。仕事も趣味も友人関係も両親の行き来もない。作った料理を一緒に食べる。いってきます、いってらっしゃいと挨拶をかわす。路子が求めているのはただ、そんなささやかで当たり前の家族のやりとりだけ。だが夫も息子もそれに応えてはくれない。日常における些細な不満、満たされない気持ちが、少しずつ少しずつ心を腐敗させていってしまう。
終始不穏な気持ちにさせられるが、特にウォーターサーバーや冷蔵庫の演出にはぞぞぞと鳥肌が立った。

ささやかな希望を見せるラストシーンの表現の仕方が素敵。もろく崩れやすい人間関係の隙間を埋めるのはきっと、互いへの少しの関心と配慮だ。
あい

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