以前から林真須美の判決については、
状況証拠のみで死刑判決を出すことが問題だという話は知っていた。
そもそも私は死刑は廃止すべきという立場なので、
こういったケースで死刑が執行されるとするなら本当に問題だなと思っていたので
この機会に問題点をちゃんと知れるのを期待して観賞しました。
今作を見てもこれが冤罪である、という風には思えない。
なんせヒ素を使った保険金詐欺が常態化してた一家があり、
この期に及んで夫の林健次は「アクトオブキリング」を想起させる饒舌さで自分の悪行を武勇伝のごとく語る。
こういう心象の悪さこそが、当時の過熱報道でこの夫婦、林真須美こそ犯人であるということを強く印象づけた大きな要因であり、
劇中で支援者の前に登場するオリオンビールTシャツのおじさんの語ることが、
今も社会的な雰囲気として存在することは間違いない。
ただ問題なのは、検察の捜査のあり方であり、
そこが曖昧にされたままいつでも死刑が執行しえるという現実なのだ。
目撃証言、使用されたヒ素の鑑定、そして動機。
被害者遺族も、本当の動機が知りたいと言う。
だが、それすら語っていない被疑者を
この国はいつでも殺せる状況になっている。
健次、浩次親子が後半に行くに従ってどんどん面白くなり、
最後にある人物を訪ねるくだりは
なかなかに恐怖心を掻き立ててくれる。
そう、金のためにヒ素を自分で飲んじゃう人間であり、
そういった行為を幼くして見てきた長男。
本当にどうなることかと思いました。
監督はけっこう冤罪の可能性を信じているように見えるが、
いずれにしろ審理の過程に問題があったことは間違いない。
そしてその問題を覆い隠してしまったのは、
過熱報道にすっかり我々が踊らされたからなのだ。
加害者側の家族ががっつり出てくるだけでも
なかなかおもしろい作品でした。