宮崎フィルム

マミーの宮崎フィルムのレビュー・感想・評価

マミー(2024年製作の映画)
5.0
 意識していたわけではなく,見終わって気がついたのだが,全く期待しないで映画館のシートに座っていた。で,結果はスコア通りの視聴感である。

 林死刑囚が,冤罪なのかどうかというのが映画の主要な筋であるにしても,マスコミから垂れ流される断片的な情報を,無関心の大衆が(むしろ無関心であるがゆえに),いかに信頼しているかという点が可視化されたことに,ドキュメンタリーの真骨頂を見た。むろん,自分自身の愚かさを再認識したことも,自白する。

 事件に関与した人達から見える風景は,かくも異なるものであり,定説に合理的な疑念を差し挟ませる余地があることに,痺れるほど興奮した。判官びいきの気がある者としては,少数の専門家(弁護士,ジャーナリスト,学者等)が,科学的見地から最高裁判決に立ち向かう姿は,フィクショナルムービーよりも,アドレナリンの放出を感じたほどである。

 少なくとも再審の余地は大いにあるように思うがどうだろうか。加害者家族に課せられる重圧とそれをあえて支援する無償の一人ひとりにも,想像力を刺激させられる余韻を感じた。特に息子さんの穏やかな物腰には,少なからず感銘を受けた。少しでも多くの人に見てほしいドキュメンタリーである。