さよこ

チャチャのさよこのレビュー・感想・評価

チャチャ(2024年製作の映画)
4.1
【Filmarks試写会にて鑑賞🎬️】
酒井監督によるアフタートークはネタバレを含むため公開後に追記しました🙌

🌼全体の感想
恋愛映画のようなポップな始まりなのに、まさか胸キュンじゃない方のドキドキを味わうことになるとは…!特に中盤からは同じ時間軸のA面とB面を観ているような構成になっていて、これはラストを知った状態でもう一度最初から観たくなる。最高でした🫶

🌼色彩とテンポ
主人公が務める会社がデザイン会社ということもあって、オフィスもスタッフもみんなカラフルで観ているだけでテンションが上がる。B面に突入してもテンポは保たれ、このシチュエーションで主人公そんな選択しちゃう…!?と予想外の動きがあるから中弛みしない。恋愛の刹那的な部分と日常のポップさを描くバランスがとても好きだった。

🌼恋愛観
恋愛における比喩表現である「世界中を敵に回してもあなたが好き」を地で行くタイプの恋愛映画。両者ともに、この感情は他人に分かってもらえないんだろうな(分かってもらわなくていいや)が根底にあって、向き合っているようで向き合っていない、本音を言うほど距離の近くない曖昧でふわふわした感じ。恋人未満な距離感も程よく描かれていて、なんだか少し儚かった。

🌼ロケ地
このタンポポが描かれているブロック塀は吉祥寺のあの道だ…!と思ってちょっと嬉しくなった。可愛い猫カフェがあるプティット村のすぐ近く🐈️

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
(※公開後に追記しました)
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🌼主人公/チャチャ(伊藤万理華)
主人公は一見マイペースで可愛く自由奔放な女の子に見えるけど、職場でギリギリ聞こえる悪口を言われたり、自身のメタ認知も「ちょっと可愛がるにはちょうど良いけど一生面倒みたいかというとそういう相手にはなれない女」とかなり冷静に見積っているシーンもあって、彼女の外側から見える一面と内面にギャップがありとても好きなキャラクターだった。気になる異性に対しての距離の詰め方が見事で、それこそ猫のように甘えたり、突き放したり、とても可愛いかった。

🌼樂(中川大志)
主人公のわざとらしいくらいのあざとい振る舞いにも全然なびかず、それどころか割と辛辣な返しをしていて、信頼できる男だな〜くらいに思っていたけど、こいつが一番やばくて笑ってしまった。

🌼その他、いろいろ
・好きなものと嫌いなものが私たちは真逆だからちょうど良いね(めちゃ分かる)
・好きな色に合わせてドリンク作ってくれるの最高すぎる。映画館でこれ飲みながら観たい🩷
・即席テーブルが危なっかしくてハラハラした。自分なら絶対ひっくり返しちゃう。
・エンドロールが流れるまで中川大志と気づかなかったーーー!
・チャチャが描いたイラストかわいい
・あれ!チャチャが道路で拾って押し花にしたタンポポじゃん!!!って気付いた。
・なぜこの男は働かないのか…
・割引きチケット渡そうとしてる姿でははーんってピンとくる女の勘の良さよ。

【余談】
(not) HEROINE moviesの作品はどれも斬新な角度から恋愛を描いていて大好き。

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📝ここから先はアフタートークレポート
(※ネタバレを含むため公開後に追記しました)
(※とあるキャラクターの名前は物語の大事な部分なので"彼"という表記に置き換えて記載しています)
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この日の試写会は酒井麻衣監督が登壇しました。試写会に参加した方からの質問も個性的で楽しかったです。まずは司会の方がされた質問からレポートします。

Q.本作の着想はどこから来たのでしょうか
A.メーテレの方から酒井さんのオリジナル作品を作ってみませんか?とお話をいただいたのがきっかけです。最初は10人くらいの女の子が出てくる短編を考えてたんです。メーテレさんからはゴールを決めずにまずは書いてみてくださいって言ってくださって、そのいくつかある短編のなかから「この話が面白いね」と言われたところからチャチャという主人公が生まれました。

Q.途中からクライムになる展開にびっくりしました。
A.クライム…?(※クライムの説明をうける)あ、すみません。そうですね。もともと短編のなかで"ミステリアスな男の子に恋をする"という話があって、その男の子がどこか犯罪者めいているというか、水晶体をコレクションしている、というストーリーがあったんです。それを軸に作っていって、結構あとのほうでチャチャを加えることになった感じです。

Q.映画のなかの色彩がとても印象的でした。
A.オリジナル映画なので好きなものを詰め込めれるんですよね。この作品では自分が本能的に好きだなと思う食べ物や色使いをさせてもらいました。ファッションについてはキャラクターの造形にこだわりを持っていて、例えばチャチャは最初カラフルな洋服が多いんですけど、樂に出会ってから服装がどんどん白くなっていくんですよね。それは樂が白いコーディネートが多いから引っ張られてるっていうか。浴衣のシーンも以前のチャチャならカラフルなものを選んでたはずなんですけど、映画のなかではモノトーンに近い配色の浴衣を選んでもいたり。そして最後の森のシーンでは白の衣装。でもチャチャ自身はその変化に気付いてないんです。自分は狂った愛…狂愛にも興味があって、そういうのを描いたつもりです。

Q.それぞれの衣装はどうやって決めていくんですか?
A.衣装はスタイリストの小泉美智子さんという方で、他の作品でもずっと一緒にやっていて。彼女にお願いすると、キャラクターを服装からも作ってくれるんです。例えば社長にハットを被らせたり、樂の衣装は白が良いんじゃないかと。一緒に話し合いながら決めていく感じです。

Q.樂が作るカラフルなドリンクも素敵でした。
A.自分が映画を観て、こういうのを食べてみたいなと思える映画が好きで、本作ではオムレツだったり、宝石のようなドリンクをやりました。自分もチャチャと同じで、絵の具ってクリームみたいで美味しそうだなって思ってました。色=おいしそうという感覚を大事にしています。映画のなかのチャチャは樂の気持ちが自分にはないって分かってるんですよね。でも樂と一緒にいたいという気持ちが好きだからなのか、執着なのか分からないでいる。それで樂の血を舐めてみて「美味しくない」ていうのが分かってチャチャの気持ちに一応決着をつけたつもりです。リトマス紙のように、血を舐めてどういう反応を自分がするのかで判断したっていうか。

Q.時間の流れが特徴的でした。
A.それぞれの役の目線でみると違った目線で見れると思うんです。樂が「飯でも行こうか」って言ったときにチャチャが断らなければ、彼は監禁されることはなかった。チャチャが断ったときに言った「人の目を気にして生きるのはもう辞めた」というのが引き金になってるんですよね。そして翌日チャチャが家に遊びに来たときには、実は彼はもう監禁されてあの状態でいる。なのでよく聞いてもらうと分かるんですけど、ラップ音みたいなドンドンっていう音をかすかに入れているんです。あと、脚本を書いていたときはタバコのシーンは紙タバコをイメージしていたんだけど、紙タバコを吸ってる子は最近見ないなって思って、チャチャは電子タバコ、樂は紙タバコにしています。途中で樂も電子タバコを吸い始めるんですけど、チャチャのことを好きになった影響?と思いきや実は全然関係なくって、彼を監禁したときにポロっと落ちたのを拾って「これ流行ってるの?」て聞いて彼からパクったものです。後半で彼を監禁してることが分かるまではタバコがミスリードにならないように、引きで撮ってタバコが映らないようにしています。

(※ここから先は会場からの質問です)

Q.彼の身体を洗うシーンにこだわりはありますか?(監督が手掛けたテレ東のドラマでボディに関する監督からのオーダーがあった?ぽいです)
A.監禁されて何日も経ってるから洗ってあげる優しさもあるんだっていう部分を描きたかった。あとは縛られてる姿もフェティシズム的なものがあって、ぐっとくるというか。この映画のなかでは、血を舐める/絵の具を舐める/縛って洗うなどのシーンがあって、ここは俳優さんと話し合って"フェティシズム"として理解してもらって撮った。ただ樂にとっては洗濯物と同列なんですよね。彼のことを洗濯物として扱ってるんです。

Q.予告編でも可愛い感じの曲を使っていますが、音楽はどのようなオーダーをされたのでしょうか
A.フジモト(ヨシタカ)さんというよくご一緒している作曲家の方にお願いしました。チャチャが登場する冒頭のシーンと、耳を切るシーンでかかっている曲はフジモトさんがチャチャの脚本を読んで「こういう感じがします」と提示してくれました。途中でかかるポップな音楽は、チャチャは可愛く見えるかもしれないけどチャチャ自身は自分を可愛いとは思ってないので、そういう曲をオーダーしました。

Q.メインキャストの4人はどのように決まっていったのですか?
A.基本的にはプロデューサーと話し合いながらオファーをさせていただく感じです。チャチャを演じる伊藤万理華さんは、脚本を読んだプロデューサーから酒井さんと伊藤さんはきっと相性が良いと思いますって言われて。自分は伊藤さんの音楽(※乃木坂46)はあまり通ってないけど、会ってみたいと思って、一回お会いしたらもうチャチャさんだ…!と思ってオファーをさせていただきました。

(ここで質問コーナーは終わり司会進行の方へ)

Q.最後に一言お願いします。
A.この作品を観てくれて嬉しいです。普段言葉にはしていない感情を映画の中に入れていて"この感覚はやだな"とか"この感覚はいいな"という感覚を大事にしてほしいと思ってます。予告では(ネタバレになっちゃうので)入れたいシーンが入れられなかったので、ぜひ皆さんSNSで「まさか花が喋り出すとは…」とか「頭がおかしくなりそうw」とか色々発信してもらえたらと思ってます。よろしくお願いします。

【追記】
監督と一緒に登壇した方(※雑誌で映画の連載を持っている女性の方でした)がチャチャ風の衣装を着て登場し、監督との対談では作品に対する思い入れのある相槌やコメントをしていて、すごい映画への愛情が伝わってきました。強火のファンが一緒に登壇してるみたいで聞いてて楽しかったです。監督もふんわりした雰囲気の方で色んな制作エピソードを聞けて贅沢な時間でした。Filmarksさん、試写会の当選ありがとうございます☺️
さよこ

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