九龍城へのノスタルジーと雨傘
タイムラインの熱さに促されて、軽い気持ちで見始めた映画でしたが、理屈じゃなく感情に訴えかけてくる、素晴らしい映画でした。劇場は満員。しかも若い人がとても多かったですね。
本作はアカデミー賞 外国語映画賞の香港代表だったらしいですが、残念ながらノミネートは逃してしまったようです。。でもまぁ、そんなん関係ないですよね、っていうか、そもそもどんな映画かも説明不要ですよね、ということで、以下は勝手な感想です。
■ 懐かしの香港アクション
ジャッキー・チェンや、ユン・ピョウ、そしてサモ・ハン・キンポー。「プロジェクトA」や「スパルタンX」ど真ん中世代にとって、ワイヤーアクションバリバリの香港アクションには懐かしさしかなく、テレビ放映の翌日は、学校の休み時間や放課後、そこら中で、悪ガキたちがカンフーファイトしてたことを思い出しました。
本作では、九龍城のセットに10億円を投じ、るろうに剣心も担当された谷垣健治氏がアクション指導を担当したとのこと。まだまだ見逃しがありそうなので、たくさんUPされているYoutubeのメイキングを見ていきたいと思っています。
■ 九龍城
監督とほぼ同年代の私にとって、九龍城(たしかクーロン城と呼ばれていた)はリアルな思い出で、変な話ですが、当時流行になっていた記憶があります。
たしか、2000年の少し前ぐらいまでは建物は現存していた記憶があり、当時、写真をやっていたこともあって、撮影できないかと思ったものですが、やわな日本人が近づける場所ではなく、当然ながら断念。(上陸もできないのに軍艦島の対岸まで行ったりしていた無茶な若造でした・・)
パンフには、九龍城の簡単な歴史も書かれていたのですが、中国政府にとっては『不名誉な場所』とされているらしく、資料があまり残っていなかったそう。むしろ日本にたくさん残っていた資料が参考になったと書いてあり、そうそう、流行ってたよね、と懐かしく思い出しました。
■ 川井憲次氏の音楽と押井守作品
比較的最近でも、押井守の「GHOST IN THE SHELL」は、九龍城のようなイメージが描かれており、九龍城のすぐ真上をかすめるように飛ぶ旅客機のシーンもありましたね。
(余談ですが、今年「GHOST IN THE SHELL」が4Kリバイバル上映されるらしい)
参考:GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 インターナショナル・ヴァージョンのフォトギャラリー画像(4/9)|MOVIE WALKER PRESS 映画
https://moviewalker.jp/mv30261/gallery/4/
あと、このGHOST~を含め、押井守作品の音楽を担当することが多い川井憲次氏が、本作「トワイライト・ウォーリアーズ」の音楽を担当していることも興味深いところです。
■ 傘のシーンの意味
そんな、懐かしさいっぱいのワクワク映画でしたが、気になったシーンがありました。
それは、(例の)気功の使い手ウォンガウはじめ、サモ・ハンの手下たちが襲撃するために大挙して車で九龍城砦に乗り付けたシーンで、車を降りた手下たちが、一斉に傘を広げたシーンです。
確か雨も降っておらず、前後につながりのない唐突感のある行動だったので気になったのですが、考えてみれば、香港と傘といえば、『雨傘運動』と呼ばれた2014年の香港反政府デモ。
2014年香港反政府デモ - Wikipedia
https://w.wiki/CtCR
結局デモは暴力的に鎮圧され、今も言論封鎖されている状況。
このシーンにどういった意図があったのかどうかはどこにも書かれておらず、谷垣氏のインタビューでは演者のアドリブ(下記インタビュー参照)とのことですが、香港で映画を撮っている以上、『傘』には気をつけるはずで、なんらか意味があったのではないかと勘ぐってしまいます。
参考:ついに公開!いますぐ劇場へ!!『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』 アクション監督谷垣健治氏インタビュー① - エンタメパレス
https://en-pare.com/entry/2025/01/19/132317
映画は夕陽が差し込む中、解体されゆく九龍城のシーンで終わりましたが、解体されていく九龍城とともに、香港そのもののアイデンティティが解体されていくかのような、少し寂しい気持ちにもなりましたね。
■ キャスト
我らがサモ・ハン兄貴はまだ元気そうでしたし、九龍城のリーダーであり散髪屋のルイス・クーはTHE BOOMの宮沢和史さんっぽかったし、気功の達人のフィリップは坂口憲二っぽかったし、変態仮面っぽい人もいたし、未来戦記(香港のB級SF)に子役で出てた人もいたし、とにかく楽しい映画でした!
スクリーンでもう一回見ておきたい!!🤩