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蜘蛛女のキスのおっとのレビュー・感想・評価

蜘蛛女のキス(1985年製作の映画)
4.1
モリーナはただのゲイというかMTFなのかな。

劇中でモリーナによって語られる(上映される)映画、蜘蛛女の話、ラストのマルタさん。
そのどれもがモリーナ自身であるように思えた。
たくさんの話が絡み合ってて難しいけど、映画の中でナチスと愛し合い撃たれてしまった女の人、どこかの島で自分自身によって縛られている蜘蛛女、ヴァレンティンと牢を出て島に旅立って行くマルタ。
ヴァレンティン側から見ると、最後に出会った(選んだ)のはマルタさんなんだなって悲しくなったけど、そのマルタがある島に縛られたモリーナと重ねられた人物なんじゃないかなと思ったり。
でないと同じ人が三役演じている意味合いがないかなと思う。個人的な解釈だけど。

で、モリーナさんの嘘っぽくない演技がすごかった。嫌味がない。
女だけど男として生きていて、でも女っていう一番難しいところを綺麗に演じていた。そりゃアカデミー賞だわ。
ひとつひとつの仕草がすごく綺麗だし、セリフのひとつひとつも愛情がこもってる。
同性愛だからこそ成立する「無償の愛」が込められていた。
もしこの話が異性愛だったらモリーナが「無償」で提供することはないと思うから。
その無償の愛を感じられるお芝居がすごく素敵だった。
献身的な愛でありながら、親友としての愛も感じられる。

いくつかのストーリーがひとつに溶け合って行く、すごく演劇的な作品だなと。
ミュージカル版も好きだけど、映画とはまた違う視点なので、また別のような気がする。
おもしろい作品だった。
おっと

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