さすらいの旅人

五瓣の椿のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

五瓣の椿(1964年製作の映画)
3.8
★岩下志麻による妖艶な復讐はスリリングだ
【CATV/JCOM:STREAM/配信視聴/シネスコサイズ】

名匠野村芳太郎監督の文芸サスペンス映画だ。
松本清張原作が得意な監督だが、山本周五郎の時代劇もなかなかいい。本作は若い娘による壮大な復讐劇だが、時系列を上手く組み合わせているし、加藤剛演じるコロンボ刑事みたいな八丁堀の登場も面白かった。当時としては珍しい一本立て興行の大作であり、休憩時間を含む二部構成は上映時間162分と長尺だ。

何と言ってもヒロインの岩下志摩の妖艶な演技が光る。私も殺されてみたいよ(笑)。また、殺される男たちも田村高廣や岡田英二など当時最高の名優たちで作品に厚みを加えている。演技陣も素晴らしいが、江戸の町や室内セットも大作らしく豪華で充実しており、見応えタップリであった。最近の邦画のチープなセットに比べ、当時の製作者の映画に対する情熱をヒシヒシ感じる。

なお、邦題の読み方は「ごべんのつばき」。最初読めなくて苦労した。