現代中国映画祭2024にて。若手の中国映画を観ていると、高齢女性が何らかの形で取り上げられる作品が多いようで、時代を感じさせる。先日観た『空室の女』の場合は、同居中の義母(認知症)・病気持ちの両親が中年女性(専業主婦)に対する重荷となっており、冒頭で主人公がボールをぶつけてしまった相手が高齢者というのも示唆的だった。
本作の場合、ある高齢女性の病気と死が描かれる。その中で、家族を何より重んじる儒教規範と改革開放以後の生活様式の齟齬を背景に、娘と息子の人生模様が浮かび上がる。映画は、終末医療や介護のきつい現実から目を背けないが、激動の時代を生き抜き豊かさへの希望を子どもに託した高齢者たちへの敬意を表している。
監督はドキュメンタリー出身で、昔ながらの路上市場をスナップしたシーンなどにその来歴が顔をのぞかせる。