ディズニーと対照的に最近勢いに乗っているドリームワークスの新作で、自分にとっては久しぶりのクリス・サンダース監督(もう結構なお年では?)。
■CGはこれでいいのか?
本作で最初に意表を突かれたのはCGの粗さだ。といってもギザギザしているとかカクカクしているとか、そんな身も蓋もない話ではない。が、例えば動物の毛並みをみればポリゴン数かテクスチャ解像度を落としていることは一目瞭然。まるで一昔前のゲームみたい(PS3くらい?)。そして背景は結構雑だなぁ(印象づけたいシーンは別として)と思ってしまった。特に人間たちのエリアの鳥瞰ショット、いくら遠景だからってまんまベタ塗りはどうかと思う。でもここは演出かも。
そういえば、ドリワは『長ぐつをはいたネコと9つの命』(監督は別)でも、アクションではディテールをそぎ落としたポリゴン感剝き出しの絵作りをしていた。もっとも、あちらはアニメーションにコマ落としみたいな実験的試みがあったが、本作は動き自体におかしいところはない。
もちろん、本作の背景や表面のディテールの乏しさは、きっと手描き風を目指しての結果だろう。ただ、個人的にはかなり微妙だった。話が良かったからすぐ気にならなくなったけど。実際のところ予算の問題もあったのではないか(ドリワの制作費はPixarの半額以下だとか)。
「ドリワがこういうルックで行くなら、むしろディズニーはこれまで通りの『普通にきれいなCG』路線でいいんじゃないか。中途半端に冒険して『WISH』になるくらいなら」などと思ったり(もちろん彼らの『普通にきれいなCG』だって「アニメーションらしさの維持」と「リアルさの追求」を相当な努力で両立させた結果なんだろうが)。
■ストーリー
本作のストーリーは王道パターンを踏襲しつつも、舞台やキャラ(特にロボ)の個性を見事に発揮させることでオリジナルな物語に仕立て上げている。それは部分的には「ロボットと動物」という組合せによる創発もある。ここで発生するコミュニケーションどうやるか問題の解決もなるほどね~と思いました(まぁ各種族が共通語を話している設定だけど)。
まぁシンプルに良い話だからあまり言うこともないけど、あとは親であるロズと子であるキラリのストーリーのバランス。家族連れがそれぞれどちらにも感情移入できるように作られている。ここ十年はピクサーでも「親を意識しているな」と思う作品が増えたけど、本作も同様であり、その達成度はかなり高い。
キツネのキャラはドリワ作品のテンプレみたいだったけど、それ以外はドリワにありがちな斜に構えた態度をあまり感じない点には好感を持った。
■3DCGとカートゥーン
ところで本作の特に序盤で引っかかったのは、3DCGカートゥーンにおけるリアリティラインの問題である。自分だけでないと思うが、「いやそれ卵割れてるだろ」「いやそれヒナ即死だろ」などと思って、序盤のギャグシーンで笑えなかった(周囲も笑いは起こらなかった)。まぁ海外(そもそも子ども向け)のギャグが笑えないこと自体はよくある話だし別に先方の欠陥とは言えないのだが、それでもやっぱり3DCGでカートゥーン調のギャグをやるとき、手描き時代のようにはいかないのでは、と思わざるを得ない。