Jimmy

半落ちのJimmyのレビュー・感想・評価

半落ち(2003年製作の映画)
4.2
新宿スカラ座で鑑賞。(前売券980円)

本作は二つの太いストーリー軸が中心となっており、一つは「サスペンスドラマ軸」、もう一つは「家族愛の軸」である。

冒頭は「サスペンス軸」に大半の比重を置き、中盤から「家族愛軸」が少しずつ見え隠れして、ラストは一気に「家族愛軸」を前面に出して、クライマックスとしての盛り上がりを見せる。
強引なのは、この「サスペンス軸」で事実関係を描く際の『叙事的描写』から「家族愛軸」で登場人物の感情を描く際の『叙情的描写』への移行する手法をとった盛り上げ方である。

通常『叙事的シーン』を丹念に描くことで『叙情的シーン』につなげていくのは判るが、本作では『叙事的シーン』の描写を省略し、観客の想像力に頼っている部分が見られる。

例えば、息子の病気の辛さ、その看病に苦心する家族などの様子は殆ど描かれることなく、本作を観終わった後で息子の顔を鮮明に思い出すのが難しいほどである。(多少なりとも回想シーンが欲しかった感あり。)
これは作品全体の構成バランスを考えて盛り込み過ぎた部分(例えば、連続暴行犯のくだり等)は削っても良かったと思う。

しかし、こうした構成バランスの問題を抱えながらも、作品自体の重厚さを保ち、緊張感を維持させているところには感心させられる。
本作の根底にあるテーマが「親子の絆とは何か」、「人間として正しく生きるための選択とは何か」など『普段からじっくりと考えるべきテーマ』を正面から突きつけられた観客は改めてこれらのテーマを考えさせられる。

特に終盤の法廷シーンでは、このテーマを登場人物に語らせるのであるが、テーマが重い分、語り尽くせるはずもなく、余計に観客は「更に自分でも考えよう」とし、そのテーマに思いをはせることになる。
本作の製作者達が意図的に狙ったのかどうかは定かではないが、作品の未消化部分が観客に与える「マインド維持」としては実に効果的である。

本作は、その根底に流れるテーマの圧倒的な重厚さと、その構成手法による語り口が見事に融合した作品といえるだろう。
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