想像以上に面白い映画だった。『1984』的な近未来を現代日本の延長線に嵌め込みつつ、普遍的な若者の葛藤を水気たっぷりに描く良作。どちらの意図もバチンとハマってるのが見事すぎて、わりと序盤で空監督のことが好きになった。
文化の多様化とナショナリズムも、権利の保護と国家による統制も、真逆のベクトルに見えて同時進行的に起き得るんだろうなっていうのが結構リアルに仮想されてるし、高校生の目を通した問題提起にはもちろん幼さも感じるけど、その危機感を「馬鹿げてる」と笑う大人はもっと愚かだと思う。若者の政治関心の二極化や、防衛対象の線引きにも妙な現実味があった。
ただ、それよりもぶっ刺さったのが幼なじみ二人の関係性。ユウタとコウのお互いへの気持ちがミシミシ伝わってきた。幼なじみってやっぱり掛け替えがなくて、その後の価値観や人生が分岐しても、ひとたび集まると昔と変わらず笑い合い喧嘩できる。「こいつ自分と全然違うな」って気づいてもずっと親友でいられるし、そんな関係ってこの先もう手に入らないのかもなって思うと、無性に地元の友達に会いたくなった。