はんそく負け

CURE キュアのはんそく負けのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
5.0
もっとよく分からなさが欲しいなと思いつつ見ていたら、どんどんよく分からなくなっていった。映画の形式と理性が、同時に崩壊していくような、そういう快楽がある。
それにしても大好きなシーンがたくさんある。まず、役所広司と萩原聖人が初めて遭遇する場面。真っ暗な部屋の中、追い詰めているはずの役所が、フレーム外から聞こえてくる萩原の声に翻弄され、ここまで見せたことないほどの動揺を見せる。まぁ簡単に言うと、主人公が悪役の手玉に取られるわけで、ハラハラするシーンである。
次に、雨。精神鑑定所へ送致された萩原に役所が面会に向かう。暗闇からヌッと出てくる萩原。問い詰められ、妻に対する感情を爆発させる役所。今度はお前の番だ、と役所ははたき落としたライターを拾い、点火して机に置く。すると、ザーッと雨が降り出す。ここで役所が煽りで切り取られる。と、天井に光の穴のようなものがプツプツと現れて、それが次第に雨漏りだと分かる。で、またいろいろと問答して、役所が留置所を出ると、(理由はあって)見張りの若い刑事をボコボコにして去っていく。雨による湿度とこの暴力というのが、なんだかとっても良いんだな。
そして、ラスト。巨大な廃屋を前に立ち尽くす役所(うじきつよしも)。強風が吹いている。暗い屋内に入って左に行くと、ボロボロのカーテン越しにぼんやりと顔写真が飾ってあるのが見える。カーテンを避けて見ると、白飛んだ人の顔が映っていて、これは映画終盤で見た顔なのだけれど、それでぼんやりとこの廃屋がなんなのかが分かる。
というように、これだけ克明に覚えているシーンがたくさんあるわけで、それを吐き出さずにはいられない、そういう素晴らしい映画だった。