ヒロ

CURE キュアのヒロのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
3.8
不規則に揺れるライターの火、コップからこぼれ落ちた水の行方、回り続けるカラの洗濯機、ぼくたちわたしたちの近くに潜む日常のフリをした小さな不穏へのクローズアップと観客の体内に反響する何でもない言葉の波紋。役者は不自然にフレーム内を動き回り、カメラはそれを尾行し続ける、頑なに割られないカットへのストレスは場面転換への注意を意図的に逸らし、たった今目の前にあった現実と遥か彼方の妄想の世界をシームレスに繋ぎ合わせる。夢中になって追おうとする観客の好奇心を嘲笑うかのように物語は唐突に終わりを告げる。黒沢清の映画を観るたびに思う、何を撮るかではなくどう撮るのかが重要であることを。

2020-39
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