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オーダーのたくのレビュー・感想・評価

オーダー(2024年製作の映画)
3.8
1980年代前半のアメリカで起こった狂信的な白人至上主義グループの過激な活動を、実話を基に映画化したAmazonプライムの最新作。個人の独善的な信条のために大規模テロを計画するカリスマ的な若者は、本作のジャスティン・カーゼル監督が「ニトラム」で描いた無差別銃殺人事件の犯人にどこか通ずるものを感じる。久々に見たジュード・ロウが渋く、家族と断絶している男の寂しさが滲むところにジーン・ハックマン的な味わい深さを感じた。ニコラス・ホルトがどこにでもいるようなイケメン男性を演じてて、こんな普通っぽい人が恐ろしい考えに染まってるのがリアル。今のアメリカではトランプ大統領が極端なアメリカ第一主義を推し進め、イーロン・マスクがナチス式敬礼のような仕草を堂々と行う世界になってるのが、本作の内容とシンクロしててジワジワ来た。

冒頭で描かれる銀行強盗がアメリカで良くある普通の事件かと思えば、その犯人グループが白人至上主義の団体。リーダーであるボブ・マシューズが、教本である「ターナー日記」の手順に基づき緻密な計画を実行していくパートと、ベテランFBI捜査官のテリー・ハスクが彼らの行動を封じ込めようと捜査を進めていくパートが緊迫感を持って描かれていく。舞台となる1980年前半といえば、1982年に「ブレードランナー」「トロン」、翌1983年には「スターウォーズ/ジェダイの復讐」(当時のタイトル)が公開された自分にとっての映画青春時代であり、アメリカがこんな状況だったとは全く知らなかった。

テリーは優秀な捜査官だけど家族と疎遠になってて、彼の相棒となる保安官代理のジェイミーが家族と仲睦まじく暮らしてる様子と対比される。そしてこの二人が辿る運命の行く末は何とも皮肉。彼らが追う白人至上主義団体は、極右団体のアーリアン・ネイションズから分離した「The Order」という団体で、この単語の持つ不気味さにはどうしてもミシェル・フランコの「ニューオーダー」を連想してしまう。

計画実行のためにせっせと武器集めをするボブが、銃撃戦でうっかり落としてしまった銃から仲間の素性がバレて警察に捕まってしまった後の、「何もしないから警察に何を話したか正直に言ってごらん」というボブの口調が何とも怖い。ボブの行動原理となった「ターナー日記」が、その後も極右の教本とされ続け、つい最近2021年に起きた国会議事堂襲撃事件にまで影響を及ぼしたというのが恐ろしい。
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