ごんす

ファーストキス 1ST KISSのごんすのレビュー・感想・評価

ファーストキス 1ST KISS(2025年製作の映画)
4.5
Netflix映画『クレイジークルーズ』はことごとく台詞が決まっておらず少し不安になったけど本作は坂元裕二作品の台詞の面白さが完全復活していて良かった。

時の経過を感じる映画は元々好きで物語としてタイムリープの要素まで入ってくる。
命についてどういうスタンスで向き合っている映画なのかね?とハードル上がり過ぎないようにしていたが凄く良かった。

時間を共有していく中でソウルメイトのように思えた相手が変化していく。
それは坂元脚本で今までもやっていたし自分はかなり『花束みたいな恋をした』を想起した。
ただあちらはタイムリープという飛び道具を使わずに普通の若者の普通の別れを描いて生きていくことを肯定していたのでよりストロングスタイルであったと思う。
のこされたものがどう生きるかも坂元脚本らしく『大豆田』や『カルテット』で演じたキャラクターなどを想起させられ本作のカンナ役は松たか子以外にできなそう。

自分は坂元脚本作品は本作のようにメインの人物がそこまで多くない方が好み。バディものの会話の演出に長けた塚原あゆ子監督との相性は良かったのではと思う。
タイムリープの仕方はショボいが二人の子供や行列に並ぶ人など脇の人物達の面白さでカバーできていると思う。
物語が進めば進むほどどんどんミニマムな人の想いという所に帰結していく感じも全然説教くさくなくて泣けてしまうしエンディングの切れ味も抜群だと思った。

夫の靴下を履いているおかしみや朝御飯がパン派とごはん派だったり柿ピーのどっちが好きかなど夫婦を現すアイテム達が記号的でなくちゃんと物語の中に溶け込んでいる。

松村北斗、今後も坂元裕二脚本の常連になってほしい。
手紙の声も凄く良かった。
15年前の松たか子はラブジェネの頃を思い出した。今も昔も素敵。
リリー・フランキーが時の番人で毎回邪魔してくるとかいう設定じゃなくてホッとした。
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