櫻イミト

プリティ・ベビーの櫻イミトのレビュー・感想・評価

プリティ・ベビー(1978年製作の映画)
3.5
撮影当時11歳だったブルック・シールズを一躍スターにした、ルイ・マル監督のアメリカ進出作。実際にあった公娼地帯のノンフィクションと、そこでE.J.ベロック氏が撮影した売春婦ポートレイトに基づいて映画化。撮影はベルイマン監督の常連スヴェン・ニクヴィスト。

1917年、ルイジアナ州ニューオーリンズにあるマダム・ネルの公娼館。住み込みの売春婦ハティ(スーザン・サランドン)は12歳のおてんば娘ヴァイオレット(ブルック・シールズ)と暮らしている。近くに住む写真家ベロックはこの母娘に興味を持ち撮影モデルを依頼していた。やがて、ヴァイオレットはヴァージンを競売に出すことになり400ドル(今の日本円で100万円)の高値が付く。。。

ルイ・マル監督が得意とする子供映画を、売春宿を舞台に展開したような趣だった。エロティックな描写は避けられ、女たちに暗さはなくあっけらかんと家族的に描かれている。そして、ブルック・シールズ演ずるヴァイオレットのキャラクターは“地下鉄のザジ”とさして変わらない元気で生意気な子供である。違うのは生まれた時から売春宿に育ち、売春が当たり前だと感じている価値観。初めての客をとった後も、やっと一人前になれたと喜んでいる。

個人的には、現実離れしたシナリオと演出であり寓話として描かれているのだと思う。しかしテーマは見え難い。あえて明るく描くことで当時の売春婦二世の悲劇を描いたのだと常識人的に括る事も可能ではあるが、ならばラストでもっと強い打ち出しがあってしかるべきでイマイチ腑に落ちない。

現時点でとりあえずまとめてみると、美少女ブルック・シールズをフィーチャーした異常メルヘンと言ったところか。その線では様々な印象が残る一本だった。

※本作に先駆け「タクシー・ドライバー」(1976)ではジョディ・フォスター(当時13歳)が少女コール・ガールを演じてセンセーショナルな話題となった。

※そもそも各国の児童ポルノに関する法律が自分にはよく解っていない。本作の流通が日本では違法ではない事を、表現規制を考える上でのサンプルとして憶えておきたい。
櫻イミト

櫻イミト